11月歌舞伎座・夜の部

kenboutei2006-11-05

京橋から銀座へ。買い物をし、喫茶店で休憩後、歌舞伎座へ。
『鶴亀』雀右衛門三津五郎福助先々月の雀右衛門には随分心配したのだが、今月は、まだ少しは元気そうで何より。まあ、立ち上がって、前へ出て、少し手を動かして、後ろに下がって座って、少し休んで、また立ち上がって、前へ出て・・・の繰り返しで、踊りというにはほど遠いものであったが。
どこかのインタビューで、雀右衛門は、舞台が休みの時はかえって調子が悪くなると、言っていた。であるならば、松竹は、たとえ少しの時間でもいいから、雀右衛門の出番を毎月作っておくべきだ。我々は、その舞台姿を、ただ眺められるだけで幸せなのだから。
『二月堂』芝翫の渚の方、仁左衛門の良弁。前に鴈治郎の渚の方で観た時は、睡魔との戦いだったのだが、今日は面白かった。芝翫が非常に良い。花道の出から、老婆の情感が滲み出ていた。芝翫特有のリアルな演技がそれほど過剰ではなく、この芝居では適度に活かされていた。老婆の嘆きを受け止める仁左衛門も、大僧正としては少し爽やか過ぎるが、立派。親思いの心優しさが、仁左衛門自身とオーバーラップして受け止められた。夜の部で一番の出来。
『雛助狂乱』菊五郎が花道から登場。初めて観る舞踊で、『保名』のようなイメージを持っていたのだが、菊五郎の姿は、実悪風。捕り手との立ち廻りの間、いつ「狂乱」するのだろう、と思っていたら、あっけなく終わってしまった。何だったんだ。
『五條橋』富十郎、鷹之資。親子円満。
『河内山』團十郎の河内山。台詞が黙阿弥調にならないのは、望んでも仕方がないので我慢するが、時々見せるおどけた口調は、観客の一部には受けていたものの、品がなくて良くない。三津五郎の出雲守、段四郎の高木、弥十郎の大膳等は、いずれも非常に良かったのに、團十郎だけが浮いていた。特に三津五郎は、実に良い出雲守だった。この役は、ともするとただ女好きの暴君のようにしか見えないのだが、当主としての意地とプライドがあって、役が大きかった。それだけに、團十郎との対決が期待されたのだが、役作りにおいては、芝居の話とは逆に、團十郎の負けである。他に、「質見世」での右之助の後家が、いい出来だった。