『ブロードウェイ・メロディー』

kenboutei2006-10-29

MGM初期のミュージカルの傑作という触れ込みと、第2回アカデミー賞作品賞受賞という権威に負けて買ったものだったが・・・。
ブロードウェイを目指してニューヨークに来た田舎の芸人姉妹。それを迎える姉のフィアンセは、美しく成長した妹の方に恋をしてしまい、妹も彼に惹かれるが、妹は姉を裏切れない心から、好きでもない金持ちと付き合い一騒動。結局その関係に気づいた姉がフィアンセとわざと喧嘩し、妹と結婚させ、自分は一人涙する、というお話に、ところどころ歌や踊りを織り交ぜる、バックステージものの原型的作品だが、その歌や踊りがつまらないのが致命的。
姉妹と男の三角関係で、姉妹の一人が身を引くという話では、溝口健二の『お遊さま』を思い出したが、もちろん溝口ほどに深く複雑ではなく、むしろ粗雑な演出によって、出演者がみな魅力に欠け、退屈極まりないドタバタとなり、また、最後はハッピーエンドを求められる(しかもミュージカルだし)ハリウッド映画では、これが限界なのだろう。ラスト近くの、自らフィアンセを妹の元に走らせた後、楽屋で嗚咽する姉(ベッシー・ラブ)の演技だけは、アカデミー賞級だったかな。妹役のアニタ・ペイジは、確かに魅惑的。
まあ、当時のボードヴィルの雰囲気は良くわかり、トーキー初期に作られたものとしては、もの珍しさもあって、受け入れられたのではないだろうか。
ボードヴィルの雰囲気といえば、特典映像の短編集「Metro Movietone Reviews」。後の「エド・サリバン・ショー」と同じような司会者紹介スタイルで、次々と芸を披露していくのだが、その芸人たちが、ことごとく野暮ったく、またどことなくフリークスの気配を感じさせる。エンターテイメントの国アメリカにしては、まるで洗練されていない、田舎っぽさがあって(もともとヨーロッパから見ればそうなのだろうが)、興味深かった。紹介する司会者が(二人出てきたが、二人とも)、これまた変質者っぽく、かなりイライラさせる。当時のステージはこういう司会者が多かったのか。
もう一つ特典で、「The Dogway Melody」という本編のパロディがあったが、これは本物の犬に衣装を着けて芝居をさせる(ように見せる)という、今なら動物虐待で許されないだろうキワモノだった。
パロディにされるほど、本編がアメリカでは人気があったということでもあり、実際、続編となった『踊るブロードウェイ』の本題は、『BROADWAY MELODY OF 1936』であり、その後の『踊る〜』は、皆その年代を表記しているだけで、要するにこの映画が一つの形式として定着していたということだったのだろう。そういう意味で映画史的には貴重な作品なのだということだけは、理解できた。

ブロードウェイ・メロディー 特別版
ワーナー・ホーム・ビデオ (2006/02/03)