六月歌舞伎座昼の部

kenboutei2006-06-18

君が代松竹梅』翫雀、孝太郎、愛之助
角力場』染五郎が良かった。放駒はまだ線が細いため、とても濡髪と対戦できるような男には見えず、また、声の通りが悪いのも難(これは幸四郎の濡髪もそうだ)であったが、コミカルな表現が似合っていた。与五郎の方も、上方のつっころばしの雰囲気がだんだん身についてきており、感心した。上方和事への傾倒も含め、染五郎は、父親の幸四郎とは違った資質を自分の中で見出しているようで、それがようやく観ている方にも伝わってきたような感じだ。
観る前は、高麗屋親子なら、「角力場」より「引窓」を観たいと思っていたのだが、染五郎の奮闘で面白い一幕となった。
この「角力場」は、こういう立役親子で観るのも面白い。例えば、團十郎海老蔵段四郎亀治郎。一番観たいのは、彦三郎・亀三郎親子だな。
『藤戸』吉右衛門の新作歌舞伎。平家物語を題材に、佐々木盛綱に殺された漁師の母親が前シテ、その漁師の亡霊が後シテとなる、能仕立ての舞踊劇。筋書きによると、息子を失った母親の悲しみを通じて反戦を訴えたいとのことだが、そういうテーマがあまりにもストレートすぎて、ただただ「ごもっとも」とうなだれるしかない。分別臭い老女を演じる吉右衛門を観ていても、あまり面白味はなかった。
『荒川の佐吉』平成十三年の同じ仁左衛門の舞台を観ているのだが、全く覚えていない。今日の舞台では、仁左衛門の佐吉が卯之吉を実の母親に返すところなど、涙を堪えるのに必死であったのだが、前回は何も感じなかったのだろうか。不思議だ。
段四郎、芦燕、染五郎時蔵、そして菊五郎と、みな適役で言う事なし。