国立・文楽『天網島』

kenboutei2006-02-26

雨の三宅坂。第三部『天網島時雨炬燵』を聴きに行く。
近松の『心中天網島』の改作版。昔はこちらの方がポピュラーだったようだが、最近は原作重視傾向が強かったせいか、通しでこの改作版を観るのは、自分は初めてかもしれない。
住大夫の「河庄」。今月は、「竹本住大夫文化功労者顕彰記念」と銘打たれているので、この段が一日のメインのはずだが、あっさりと終わった感じ。住大夫は可も無く不可も無くといったところ。観客の反応も薄く、声掛けなどは、次の嶋大夫や千歳大夫の方にきていたくらい。住大夫のための出し物であったら、むしろ他の作品の方が良かったと思う。
「紙屋内」では、簑助のおさんが素晴らしい。暖簾の内からそっと夫を見つめる姿、後ろ向きで暖簾を握りしめ、涙にむせぶ姿など、まさに簑助調。
「道行」は、呂勢大夫、始大夫の掛合が楽しめた。呂勢の艶のある高音が、だんだん聴き易くなっている。
この週末は体内時計が狂ったのか、夜中に目覚めたり、日中眠ったりと調子が悪く、今日も午後5時の回だけだったのに、気がついたら眠っていたりしていて、全体的には集中力の欠いた鑑賞だった。