『キング・コング』

kenboutei2005-12-28

仕事納めで飲み始めた隙にこっそり退社、そのままマリオンへ。日劇東宝の午後6時半の回。予想外にガラガラであった。(こういう時でも全席指定というのは、どうなんでしょうか。)
「今時キングコングかよ」という思いと、前回リメイク時の失望感から、少し身構えて観に行ったのだが、いや、素晴らしい。さすがピーター・ジャクソン。脱帽しました。
冒頭、アル・ジョルスンの歌声から、大恐慌時代の雰囲気をうまく演出。ボツになりかけている映画製作の続行を目論む監督、女優を見つけ、チャーター船での航海、船上での撮影、髑髏島へ漂着、原住民との戦い、と、コングが出ないまま、優に一時間以上は経過するが(怪獣映画としては正統な演出だ)、全く飽きさせずに観客を惹き付ける。『ロード・オブ・ザ・リング』でもそうだったが、どんなに長くてもそれを感じさせない、この監督の演出力というのは、相当なものだと思う。
髑髏島でアン・ダロウがコングに捕われてからは、それこそ息をもつかせぬ迫力ある映像衝撃の嵐。プロントザウルスによるスタンピード、三頭のティラノザウルスとコングの死闘、谷間に落ちた船員たちを襲う夥しい虫とクリーチャー群(これは気持ち悪く、かつピーター・ジャクソン的)、まさにエンターテイメントの極地。同じテーマでスピルバーグが撮っても多分適わないだろう。
オリジナル、前回のリメイク以上に島でのシーンをじっくり描いているが、ニューヨークにコングが連れて行かれてからも、実に良い。
特に、セントラル・パークでのアンとコングの氷上ラブシーン。これは、アステア=ロジャースコンビのそれに匹敵する名場面として、今後語り継がれるべきである。
お約束通り、エンパイア・ステート・ビル複葉機に撃たれて最後となるが、コングのリアルな生き様に、感涙。
CGでここまで描ける技術にも感心するが、それ以前にコングをこのようなリアルな存在として表現させた、脚本の勝利でもある。プレミア上映時に、主演男優賞にコングを、という声が上がった(by『スターログ日本版』)のも、真面目に納得できる。
同じオタク監督のCG映画でも、昨日観た『スカイキャプテン』とは、比べ物にならない、極上のエンターテイメント。
欲を言えば、アン・ダロウがもっとエロチックな方が良かったのだが、まあ、これは趣味の問題だろう。今回のナオミ・ワッツはキュートで、SFヒロインとしては充分及第点。
あちこちに散りばめられた、オリジナルへのオマージュも心憎い。
早くメイキング入りのDVD出ないかな。