12月国立・『河内山と直侍』通し

kenboutei2005-12-10

出色は「蕎麦屋」。幸太郎、扇緑が、近年にない蕎麦屋夫婦を演じている。それに芦燕の丈賀。何度も演じている役だが、自分が観た中では今回が一番良かった。去年、田之助が丈賀を初役で勤め、いかにも情のある芝居ぶりで良かったのだが、この役を持ち役としている芦燕も影響を受けたのかもしれない。そう思わせる程、これまでの芦燕のイメージを超えて、しっとりとして味わい深い、良い丈賀だった。
染五郎初役の直次郎は、花道からの出に雰囲気があった。傘を差し、頬被りで俯きながら歩く姿が、なかなか決まっていて、この役の柄に合っていたと思う。台詞が現代調になるのが難だが、今後、何度も観てみたいと思わせる直次郎であった。
脇が充実し、芯の染五郎が奮闘。それまでの眠気が吹っ飛んだ。
「寮」の時蔵左團次もまずまず。
ところで、今日は花道すぐ横で観ていたのだが、染五郎の膝小僧が、人の倍、縦長になっている(膝のお皿が二つ入っているように見える)のに、驚いた。昔、怪我でもしたのだろうか。
今月の筋書、巻頭の「資料展示室」の新藤先生の解説が面白い。役者絵における、九代目と初代左團次の顔の違いが良くわかった。扉絵にもなっている、年英描く九代目の河内山が、何とも言えず良い。首の皺二本が、九代目をリアルに表現しており、この役のイメージを膨らませてくれる。こういう役者絵も、北斎と同じように評価されてほしいものだ。(一枚欲しいなあ)