六月歌舞伎座昼の部

kenboutei2005-06-12

『輝虎配膳』歌舞伎座では三十三年振りの上演。もちろん、初見。秀太郎の越路、梅玉の輝虎、時蔵のお勝、歌六の山城、東蔵の唐衣。それぞれのキャラクターに特徴があり、それに役者がうまく嵌まった。義太夫狂言らしい面白さを堪能。何故これまで東京での上演が少なかったのか不思議なくらい。(筋書に三十三年前の歌舞伎座の舞台写真が載っていた。先代鴈治郎の越路、歌右衛門のお勝、十三代目仁左衛門の輝虎。この一枚だけでも、その舞台の面白さが伝わってくる。ビデオが残ってるのなら是非観たいものだ。)
秀太郎の越路、四月の『源太勘当』での延寿を観た時に、三婆を観てみたいと思ったのだが、意外と早く実現した。この役からすると、もっと手強くてもいいが、初役としては良かったのではないか。何しろそれまではお勝を演じていたのだから。時蔵のお勝、琴の扱いが見事。今後も持ち役として演じてほしい。梅玉の輝虎も「気早の大将」らしく、更に、梅玉にしては珍しい力強さがあった。歌六東蔵もそれぞれうまい。葵太夫の竹本も良かった。(三味線は良くなかった)
この一幕は、色々な配役で楽しめそう。先月までの「勘三郎組」だったら、芝翫の越路、仁左衛門の輝虎、玉三郎のお勝、勘三郎の山城(もしくは唐衣)。團菊祭で出すなら、田之助の越路、菊五郎のお勝(もしくは山城)、團十郎の輝虎、芝雀の唐衣。松緑海老蔵菊之助の若手中心なら・・・など、想像は尽きない。これを機に、度々出してほしい。あっと驚く配役も期待。
『素襖落』吉右衛門の太郎冠者。那須の与一の物語が面白い。富十郎の大名は、前半はメロメロだったが、後半になって、吉右衛門との息もようやく合った。
『恋飛脚大和往来』染五郎の忠兵衛はやはり無理がある。特に「封印切」の前半は、上方言葉がまだおかしい。仁左衛門の八右衛門とやり合ってからは、だいぶ良くなってきたが、これも仁左衛門に引っ張られてのことだろう。「新口村」の方は、糸に乗る分、言葉遣いは気にならなくなった。しかし、先月の歌舞伎座で黙阿弥物に秀太郎が出たのと同じ違和感を最後まで拭い切れなかった。
仁左衛門の八右衛門はお見事の一言。「新口村」での孫右衛門、いつもは忠兵衛と二役だが、一役専任の方が落ち着いて観られる。
孝太郎の梅川。「封印切」では貧相に見えたが、「新口村」の方は色気もあってなかなか良い。また、「新口村」では染五郎とのバランスも良かった。
(要するに、「封印切」の方は簡単な芝居ではないということだろう。それを浅草歌舞伎でもやっていたとは、何ともチャレンジングだったなあ。)