六月歌舞伎座夜の部

kenboutei2005-06-04

襲名興行の喧噪も去り、静かな歌舞伎座。夜の部は、南北の通し狂言と踊り2題。
『盟三五大切』寝不足だったせいか、前半は、眠くて退屈に感じた。後半、殺しに入ってからは目も覚め、面白い。吉右衛門の源五兵衛。ただの色悪ではなく、塩冶の浪士であるということが腹にある演じ方のようだった。それが前半の退屈さの遠因であったかも。時蔵の小万は、南北の退廃した世界に合ってきた。仁左衛門の三五郎の方は、南北の世界のもう一つの特徴である、退廃の中の滑稽味をうまく表現できている。
この三人で演じる南北物は、複雑な話の骨格をしっかりと捉えて、舞台に破綻がない。「実は・・・」の辻褄合わせの展開も、馬鹿馬鹿しいと思いながらも、なんとなく納得してしまう。特に台詞廻しがうまいので、頻繁に出てくる「素敵に」という当時の流行言葉(?)にも違和感がなかった。全体にやや色っぽさに欠けるのが難点だったが、幕末の雰囲気は充分出ていた。
良寛と子守』富十郎が二人の子供と共演したいがために出しているとしか思えないのだが、初御目見得の愛ちゃんは、幕開き後すぐに逃げ出し、舞台袖で自由に行動していた。
『吉原雀』歌昇の踊りに惚れ惚れ。もっとこの人の踊りを観たいものだ。(踊っている時の形は、映像や写真でしか知らないが六代目に似ているような気がした。誉めすぎ?)