六月歌舞伎座夜の部・海老蔵の助六

kenboutei2004-06-26

千秋楽。ふた月続いた東京での海老蔵襲名興行も今日で最後。このふた月の初日と千秋楽を観ることができ、これ以上言うことはない。一階の後方で観る。
「吃又」吉右衛門雀右衛門。このコンビで観るのは二回目となる。前回の吉右衛門では前半の又平の絶望に感じ入ったが、今回は、後半の喜び溢れる又平が良かった。石塔に筆を入れている時、これまでのどの又平も(前回の吉右衛門もそうだったと思うが)死を前提とした虚無感というか、諦念の中の無心で描いていたのだが、今回の吉右衛門は、むしろ最後の一筆にかける気迫が漲っていた。同じ無心の心境でも、虚無ではなく、本当に描くことしか頭にない究極の集中力みたいなもの。こういう又平は初めてだった。名字をもらって浮かれる又平も、ちょこちょこした感じではなく、むしろ堂々とした感じすらあった。
吉野山半分以上寝てた。菊之助の静、出と引っ込みの美しさは堪能。最近は海老蔵海老蔵と騒いでいるが、本当はこっちの方が贔屓なのだ。しかし、歩き方が何か変だった。
助六助六は何度観てもいい。幕が開き、三浦屋のあの舞台を見るだけで、祝祭空間に入り込む。ここにおよそ2時間も浸かれる幸せ。海老蔵助六は、多くの人が指摘しているように、彼自身が助六。出端の動きに見える自信が、「オレが助六だ」と言っている。台詞の抑揚なども自分の言い易いように咀嚼しているが、それも彼が助六なのだから当然なのだと思えてくる。「助六さん、大当たり」。玉三郎吉右衛門勘九郎もみな良かったが、やっぱり助六さんに尽きる。
本日は、村松友視、松竹永山会長を見かけた。