文楽・妹背山婦女庭訓

国立劇場文楽。妹背山婦女庭訓の通し。昼夜連続で観る。
昼の部は、何といっても山の段。妹山に綱大夫、背山に住大夫。人形も定高が文雀、大判事が玉男。簑助は夜の部のお三輪に回ったが、現時点では最高の布陣と言えるだろうし、今後しばらくはこの水準は望めないと言い切ってもいいくらいである。住大夫はどちらかというと定高なのかなと思っていたが、大判事も良かった。威厳の裏にある子への情愛がしみじみと伝わってくるようだった。そして、綱大夫との掛け合いが何ともいい。文楽を聴く快感がここにあった。この段だけでももう一度聴きたいのだが、日程の都合で無理なのが残念。久我之助の千歳大夫に風格が出て来た。他の段では、始大夫が頑張っていた。蝦夷子館の段を観られたのが良かった。
夜の部は、昼の疲れが出てしまい、ちょっとうとうとしながらの観劇だった。芝六忠義の段は、何度観ても面白みを感じない。長い夜の部では、やはり簑助のお三輪につきる。病気で倒れる前の動きとは明らかに違うのだが(お三輪がホオズキを手でいじりながら出てくる場も、以前はもっとおぼこっぽかった。)、控え目になった人形の動きが、むしろお三輪の悲しさを表現しているようにも思えた。良いお三輪であった。最後の入鹿誅伐の段は、初めて観るもので面白かった。
今日の国立小劇場は、いつも感じるスノッブな雰囲気も薄く、過剰な拍手や声掛けもなく、落ち着いた感じだった。こういう空気の方が好きだ。