コクーン歌舞伎「夏祭」

コクーン歌舞伎。久しぶりに渋谷へ行く。前売りは完売とのことで、当日券を求め早めに行ったつもりであったが、午前10時前にはすでに長蛇の列であった。ちょうど自分の前で補助席は埋まってしまい、立ち見での観劇となった。実は、チケット前売り開始直後に電話でこの日の座席を確保したのだったが、うっかり引き取りを忘れたため、予約が流れてしまったという経緯がある。まあ、立ち見でも観れたことでよしとしよう。
芝居は「夏祭」。序幕にお鯛茶屋の場がつき、ここで磯之丞の放蕩が描かれる。結局団七の親殺しも、この磯之丞のためであり、ここがあるとわかりよい。もっとも、獅童の役づくりはバカ殿に近く、こいつのために皆が必死になるとは思えんのだが。また、この場では、お梶と一寸徳兵衛の関係もわかる。その後は、コクーンの割にはオーソドックスに進む。しかし、一気に殺しの場まで2時間以上続くのは、立ち見だと非常につらい。休憩後に、立ち回りでコクーン風に。観客席での蘭平風のはしごでの見得は迫力あり。ミニチュアの街並は良くわからない。人形は悪ノリ。舞台奥が開き、外とつながるのは、大阪の平成中村座の時の写真にもあったので、あまり驚かなかった。映画「明日に向かって撃て」やサム・ペキンパーのスローモーションを意識したラストは、前回の三人吉三の二番煎じのようでもあり、個人的には感心しなかった。が、会場は大興奮で、カーテン・コールは3回あった。お約束のようでもあったが。宮沢りえが一人で来ていた。本当に勘九郎の歌舞伎が好きなのだろう。彼女の座っていた席が、最初に自分が予約していた席に近かったようなので、改めて不覚を後悔した。それにしても立ち見は疲れた。東側後方からだったが、そこからでも、上手の一部が見えないのは、劇場そのものの欠陥としかいいようがない。まあ、それも自業自得なのだが。