『生物と無生物のあいだ』

半分帰省の旅中に読了。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

巷間の好評に違わぬ、スリリングで面白い、科学啓蒙書。
「生命とは何か?」という究極の問い掛けを冒頭から掲げ、自己の経験談などを織り交ぜながら、読者を分子生物学の世界へ自然と導いて行く。
DNAの二重らせん構造発見をめぐる、ゴシップ的サイド・ストーリーや、研究のための実験方法などを紹介することで、馴染みにくい話を身近なものとし、更に著者の巧みな文章テクニックとうまい比喩表現で、一気に読ませる。
動的平衡」を説明するのに用いていた、時間の流れの中での砂上の楼閣というイメージは、J.G.バラードの小説を読んでいるような、美しさすら感じた。
今後、日本におけるアシモフ博士のような、親しみやすい科学エッセイを、もっと書いてほしい。
構成力に優れ、イマジネーションも豊富なので、小説の世界(特にSF小説)も可能だろう。それこそ、アイザック・アシモフである。(研究分野からすると、マイケル・クライトンに近いか。)