住大夫三夜・第二夜「引窓」

紀尾井小ホールで「住大夫三夜」と題した住大夫の素浄瑠璃の会。演目は『引窓』で、三味線は錦糸。浄瑠璃の後、住大夫と山川静夫の対談。「第二夜」とあるのは、去年から始まった企画の二年目という意味で、来年で完結するらしい。(去年の「第一夜」では何を語ったのだろう?)
こういう日に限って、社長も交えた重要な会議があり、しかもその後は恒例の打ち上げということだったのだが、親を出しにした口実を作って、午後6時に脱出。(そして聴きに行ったのが、親子の情愛を描く『引窓』であったのは、ちょっと皮肉。)
住大夫の『引窓』を素浄瑠璃で聴くのは、多分初めてだと思う。
マクラの、「二階へしおれ行く」の語りが、住大夫にしては重厚な低音で、緊張とサスペンス感に溢れ、愛聴している越路大夫の『引窓』を彷彿とさせ、息を呑んだ。
そのまま、わくわくしてのめり込んだのだが、その後は低調。母親の情愛がうまいのは住大夫の持ち味として当然だったが、運びの勢いなどは感じられず、それほど感動的なものとはならなかったのが、惜しまれる。
山川静夫との対談では、山川氏が「これは対談ではなく、住大夫へのインタビュー」と言っていたように、住大夫のいつもの楽しい語りとなった。
一番印象に残ったのは、山川氏の「最近は、大夫が少ない、いや、義太夫を語れる大夫が少ない」と言った即座に、住大夫が「つらい!」と返したところ。
若手・中堅大夫が成長してきていることは自分も認めるところではあるが、やはり住大夫クラスとは大きな隔たりがあり、その溝はとても彼らがこの先も埋められそうにないだろう。つまり、住大夫が最後の「義太夫」の大夫であるということであり、だからこそ、この年に一度の夜が貴重なものとして、多くのファンの足を運ばせているのだと思う。(チケットは当然のように完売であった。)
来年も是非聴きたい。(チケット取るのが難しいが。)