『西鶴一代女』

kenboutei2006-10-15

溝口DVDの東宝シリーズのもう一本、『西鶴一代女』。
昔に観たことがあるのは、澤村貞子のハゲ頭のシーンを覚えているので間違いないのだが、他の場面はほとんど記憶にない。そういう意味では新鮮だったが、自分の記憶力の衰えにも気が萎える。
今から観ると、かなり寓話的な作品だった。
女性の一代記として当時どのように位置づけられたのかはともかく、ヨーロッパでこの映画が受け入れられる素地があったのは、その後のトリュフォーロメールの女性映画(という言い方も変だが)の系譜を考えても、わかるような気がする。
悲劇的な女性の物語という視点では、昨年観た『エレニの旅』も思い起こさせた。
田中絹代の渾身の演技に文句はつけられないのだが、個人的には、存在自体がエロチックで、周りの男たちが黙っていられなくなる程魅惑的な女性、それ故に堕落せざるを得ない女性としては、若干もの足りない。タイミングが合えば若尾文子に演じてほしかったなあ。
今なら誰だろう。女優はわからん。女形なら玉三郎などぴったりのようだが、エロさと運命に弄ばれる薄幸さを持合わせているのは、実は雀右衛門だったりする。もっとも、映画で観るのは怖過ぎるが。