『ミリオンダラー・ベイビー』

kenboutei2005-06-18

有楽町マリオン丸の内ピカデリー2で。(歌舞伎会のカードが使えて千円だった。)
静謐な音楽、光と闇のコントラスト。どこをとってもイーストウッド映画。
クリント・イーストウッドモーガン・フリーマンヒラリー・スワンク。キャスティングも申し分ない。
モーガン・フリーマンのナレーションが、映画全体にジャズの香りを漂わせていた。
前半のボクシングを巡る緊迫感から、後半は家族の絆や生命の尊厳という重厚なテーマとなり、それを格調高く描ききる。
予告編を観ていたせいで話の流れが大体わかっていた分、後半の衝撃と感動はそれほど強くなかったが、色々と考えさせてくれる映画だった。
イーストウッドの映画では、大なり小なり、家族との関係が重要な要素となっている。(特にイーストウッド自身が主人公の時、その役は家族との関係が壊れている場合が多い。)この映画でも、イーストウッドは、別れた娘へ手紙を送っても返送され続け、スワンク演じるボクサーは、ファイトマネーで家族に買ってやった家が全く喜ばれない。その家族からの孤立感が、二人を強く結びつけ、ラストの結末にも繋がっていく。
観客は、それぞれ自分の家族のことに思いを馳せながら、この映画を観るのだろう。その時その時の家族との関係で、印象は随分変わることでもあろう。自分も次に観る時は、感じ方が違うはずだ。そういう意味でも、どこか自分達への鏡となっている映画でもあった。(こういう撮り方は、クリント・イーストウッド監督だからこそだと思う。もし、同じ原作をオリバー・ストーンが扱ったら、単にセンセーショナルに世間を騒がせるだけだ。)
ヒラリー・スワンクが家族に再会するシーン以降のイーストウッドが実に良い。ドイツの女ボクサー、「青い熊」がとても憎らしい。(本当のプロボクサーとのこと。)