『霧の中の風景』

kenboutei2005-05-02

最近、洋画はアメリカ映画(ハリウッド)のDVDしか観ていないことと、明日、アンゲロプロスの新作(!)を観に行こうと思っていたので、まだ一本も観ていなかったDVD全集の中から『霧の中の風景』を選ぶ。アンゲロプロスの映画はこれまで『永遠と一日』『ユリシーズの瞳』『こうのとり、たちずさんで』と観てきた。結果的に製作された順番の逆から観ていることになるが、『霧の中の風景』も『こうのとり、たちずさんで』の前の作品にあたる。(偶然の選択だが。)
幼い姉弟が、まだ見ぬ父を求めて、ギリシャからドイツに金も持たずに旅に出るという、ロード・ムービー。実話からインスパイアされて作られたものだそうだが、それをアンゲロプロス独特の長廻しと映像美で描いていく。ある種の芸達者な演出である。
とにかく美しい映像と音楽に酔いしれる。映画を観ることの恍惚感といったものがあるから、アンゲロプロスは自分の中で小津とともに最も好きな映画作家だ。
父を求めて、傷つきながらも姉弟が辿り着いた河の向こう側。霧の中から少しずつ現れてくる弟の顔、そして姉の顔。一本の木に向かって走り寄り、幹に抱きつくところで映画は終わる。自然に涙が溢れ出た。オーボエの音色と共に、映画史に永遠に記憶されるべきラストシーン。(今頃観ているようでは遅いのだが。)

↑単独では売られていないようで。