『ならず者』

kenboutei2005-04-03

ハワード・ヒューズについては、映画を観たり、映画関係の本を読んだりしていると、ちょくちょく出てくる名前で、気にはなっていたのだが、詳しいことは知らない。彼の伝記映画(『アビエイター』)が上映されており、いずれ観たいと思っているが、その前に、本人が監督した作品を中古店で手に入れたので、鑑賞。
当初はハワード・ホークスが監督していたが、製作のヒューズが横槍を入れて、結局自分が監督することとなったものの、徒に時間と金を費やし、更には、ジェーン・ラッセルの胸を強調し過ぎていると検閲を受けて裁判沙汰にもなったという、曰くつきの作品でもある。
実際に観てみると、確かに不思議な作品である。ビリー・ザ・キッド、ドク・ホリディ、パット・ギャレットという西部開拓時代のお馴染みの登場人物が出てくるが、どの人物にも感情移入できないのがつらい。どうやら主役はビリー・ザ・キッドらしいのだが、ウォルター・ヒューストン演じるドク・ホリデーの方が魅力的。だが、彼にしてもジェーン・ラッセルを愛人にして囲っていたりで、決して正義の男としては描かれておらず、おまけに最後は殺されて、ビリー逃亡のため、ビリーの墓として偽りの墓標を掲げられてしまう。
演出もやたら大げさな音楽が流され、興をそぐ。コメディ風の効果音も多様されるが、決して面白いシーンではないので、戸惑うことこの上無し。ラブシーンで、唐突にジェーン・ラッセルのクローズアップ(唇まで迫る。キスを暗示しているのだろう。)となるのも、違和感があった。
そうであっても、結構見所はあり、まず、グレッグ・トーランドの撮影が素晴らしい。強い白黒のコントラストは、プラズマテレビで観ても、充分美しかった。
インディアンに追いかけられ、ジェーン・ラッセルを先頭に馬で疾駆する場面も見事。
ジェーン・ラッセルは、ヒューズに見出されてこの作品に出演したそうだが、まだ初々しく、モンローと共演した頃のような、巨大で派手なセクシー女優という印象は薄い。(確かに胸は強調されていたが)
それにしても変な映画だ。十数年前にアテネ・フランセで観た『大砂塵』にも通じる、「呪われた映画」の匂いを感じた。

ならず者
ならず者
posted with amazlet at 05.04.04
アイ・ヴィー・シー (2005/04/27)