六月歌舞伎座昼の部 海老蔵の弥生
先月に引き続き海老蔵襲名興行。
「外郎売」團十郎休演で、松緑が代役。新橋か浅草の花形歌舞伎のようになってしまったが、松緑は隈取りの顔が良くなってきた。しかし、曽我ものがふた月続くと飽きる。
「寺子屋」勘九郎、福助、仁左衛門、玉三郎と役者が揃っている割には、面白くなかった。何だか芝居が水っぽかった。丸本の味わいがない、仁左衛門がいるにもかかわらず。特に、前半の勘九郎と福助のやり取りは、世話物のようだった。勘九郎の源蔵は声が高くて、自分には合わなかった。
「口上」雀右衛門、先月の覚束なさは解消され、安心して聞けた。以下思いつくまま要旨。
- 仁左衛門:今月は海老蔵と共演できないが、来月は大阪で弁慶を共演、是非観に来て。
- 田之助:成田屋4代と一緒に。役者に年は関係ないといってもやはり歳月を感じる。
- 菊五郎:祖父のように菊五郎劇団で新作もやってくれ。先月と同じ血液型のシャレも。
- 左團次:フランスでも週刊誌を気にせず、浮名を流せ。
- 勘九郎:海老蔵は気は優しくて力持ち。足が冷えると言えば靴下を、相撲では手加減せずに2回も先輩を投げ飛ばした。生意気だが、粋で生なのだから、いいこと。
- 玉三郎:いずれ市川家の宗家となる。頑張れ。
最後のにらみもこれで三回目。今日はオペラグラス越しに睨まれた。真っ正面だったせいか、目があったような気がした。凄い目だった。
「鏡獅子」前半の弥生、腰高で重心が定まっていない感じがした。ただ、もっと男っぽいのかなと心配していたのだが、結構綺麗だった。手獅子に引っ張られて行くところは、肩がやたらと動くので、随分と不自然だった。後半の獅子は、まさに「ライオン」。オペラグラスで覗くと怖いくらい。動きの鋭さも見事で、これが立役であった九代目が創作したものであることに気づかせてくれる。菊之助や勘九郎で観てきたものとは違う、新しい鏡獅子であった。
ああ、やっぱり歌舞伎はいいなと思いながら帰路についた。