『鏡山競艶録』

京橋フィルムセンター。
歌舞伎の『鏡山旧錦絵』の映画化らしかったので、それなりの興味を持って赴いたのだが、正直、つまらなかった。
音の状態が良くなく、常に雑音が入っていて、出演者の声が聞き取りにくかったせいもあるが、単にストーリーをなぞっているだけで、映画的魅力に欠ける。かろうじて、お初が尾上の文使いの途中に岩藤一派に襲われ、女性同士のチャンバラになる場面と、ラストの腰元達の踊りを俯瞰で撮るショットが、短いながらもバークレー風になっていたのが、面白かった程度。
出演者も平凡。追悼対象者である、尾上役の森静子より、岩藤を演じた鈴木澄子の方に惹かれるものがあった。
お姫様役は森光子だったようだが、観ている間は全くわからなかった。
お初役の中村芳子が、初代鴈治郎の娘であったことも、後で知る。
映画は、歌舞伎の「鏡山」と同じ展開を辿り、最後はお初が二代目尾上を襲名して終わる。お家の姫が二人姉妹で、それぞれに尾上、岩藤がつき、妹が姉に毒茶を飲ませようとする場面もあったが、これは映画のオリジナルなのだろうなあ。
眼目の「草履打ち」も、歌舞伎のようにツケを入れるわけにもいかず、ただひたすらに打擲するだけだったので、あまり効果的な演出とはならなかった。
1938年の作品だが、ネットで確認すると、その前の1933年にも一度製作されているようだ。監督は同じ寿々喜多呂九平、33年版では、森静子がお初であった。どちらかといえば童顔の森静子は、尾上よりお初の方が「ニン」であったろう。この時の岩藤は、やはり鈴木澄子で、これは最初からハマリ役だったようだ。
70分程度の映画だったが、途中、何度か眠りかけた。・・・歌舞伎の「鏡山旧錦絵」の方を知っていなかったら、もっと退屈していたかもしれない。