六月歌舞伎座・第3部 『助六』初日

kenboutei2013-06-03

初日。会社帰りに三部だけ観る。
『鈴ヶ森』梅玉の白井権八幸四郎の幡随院。
梅玉権八は、鶸色の着物は似合っていたが、台詞や動きの色気に乏しい。幸四郎の幡随院も台詞廻しが難。声の調子だけは良いが、ごにょごにょと何を言っているかわからず、眠気を誘う。
全体的に、緩いコントを観ていた感じ。
助六前の歌舞伎座千秋楽、團十郎の助六が花道を去って行ったのを見届けた者としては、新しい歌舞伎座で、急逝した團十郎に代わって息子の海老蔵助六として花道から登場する姿を、どうしても初日に観たかった。それが叶っただけで、今日は満足。
海老蔵助六は、3年前の新橋に比べると、出端の所作に安定感が出てきた。成田屋宗家として歌舞伎十八番の『助六』を一身に背負う重責を意識しながら、しっかり演じている。もっとも、台詞については相変らず甲の声が鼻に抜け、肚に響かない欠点がそのままであった。「〜だよ」とか「こりゃまた何てこったい」のおかし味のある台詞を誇張しすぎるのも気になった。(これは晩年の團十郎にも言えたことだが。)
揚巻は福助。全体的には良い揚巻だと思ったが、最初の出の七三で、酔いが回っているのを意識してか、首や身体をぐらぐら揺らすのは行儀が悪過ぎる。もっと動かずに相手の台詞を聴いているべきだ。意休に対する台詞も、時々力を入れ過ぎて下品になり、結果としてそれに続く笑いも下品となり、観客から余計な反応が起こってしまった。
左團次の意休は、花道に七之助の白玉と一緒に出てきた時、随分小さくみえ、一瞬三津五郎が演じているかと勘違いしてしまった。本舞台で床机に腰掛けて台詞を言う度に、首が震えるように動くのは、おそらく老化現象なのだろう。後半、二度目に出てきてからは、立派。
海老蔵の若き助六を、菊五郎の白酒売、吉右衛門のかんべら門兵衛が支えるのも、今月の見物である。この二人の充実ぶりは、実に印象に残った。特に吉右衛門の門兵衛は、ゆったりと大きく、芝居っ気があって、面白かった。
この吉右衛門海老蔵がうどんをかけ、福山のかつぎの菊之助吉右衛門の娘婿)が「ざまあみやがれ」と言うのも、なかなか見られるものではない。
菊五郎も、結構元気で良かった。
通人は三津五郎海老蔵に「股をくぐれ」と言われた時の第一声は「じぇじぇ!」。「いつくぐるか、今でしょ」と続く。海老蔵に対しては、「怒ると何するかわからない」と言い捨てていた。菊五郎の番になって、再びの「じぇじぇじぇ!」となり、息子(菊之助)の結婚を祝う。ローラの真似して頬にたこ焼きを作り、「オッケー」もやっていた。
花道に入ってからは、ケータイを出して「つぶやきしなきゃ。」ついでに海老蔵のブログもチェック。「十四代目」が生まれたことを言祝ぎ、天の大きな星となった十二代目も見守っていると言い、十四代目の助六を見るまで歌舞伎がますます栄えるようにと締めくくる。
素晴らしい通人であった。
股くぐりの二人侍は、お馴染みの市蔵・亀蔵兄弟。もはや名コンビといってよい。
満江は東蔵
幕開きの口上は幸四郎が務める。「不幸にして身罷った團十郎に代わり、倅の海老蔵助六を演じる」と紹介。幡随院よりも立派な台詞廻しだった。
「十二世市川團十郎に捧ぐ」という角書きに恥じない、特に海老蔵を支える幹部役者の充実ぶりが堪能できる『助六』であった。
 
さすがに初日。寺島純子や小林麻央ら役者夫人、桟敷の舞妓の他、小泉元総理、林真理子、波野久里子などの顔もあった。(ホリエモンが『助六』の途中で劇場から出て行くのも見てしまった。)