『しいのみ学園』

kenboutei2010-08-02

昨日、『蜂の巣の子供たち』に続いて、神保町シアターで観る。これも清水宏監督。香川京子が出演。昭和30年。
大学教授の息子二人が二人とも小児麻痺となり、学校でのいじめもあることから、自分達で私財を投じて小児麻痺の子を集めた学校を設立、そこでの教師と生徒の触れ合いなどを描く。
実話に基づいた映画で、実際に今も「しいのみ学園」は継続しているという。(ネットで検索すると、設立者の先生も、100歳を超える高齢ながら、健在のようだ。)
大学教授役に宇野重吉、小児麻痺の長男に河原崎建三。(長十郎の三男!) 香川京子は、妹が小児麻痺であったことから、しいのみ学園の先生となる。
学園の鉄夫少年と香川京子先生の交流が最大の見せ場。親に捨てられたような形で入園し、身体も弱く、自閉症気味な鉄夫が、香川京子の励ましで、しいのみ学園の歌を自ら歌うようになる。周囲の子供たちともだんだん仲良くなるが、体調が悪い時に無理矢理参加させられた汽車ごっこの途中で転倒、そのまま重篤な状態に。病床で親に送っていた手紙の返事をひたすら待つ鉄夫に、香川京子は、親の代わりに返事を書き、その手紙を鉄夫に読んで聞かせ、鉄夫は死んでいく。
ヒステリーすぎるほど潔癖を求める現代社会からみると、香川京子の行為は偽善と受けとられかねないが、この映画の時代は、嘘にも良い嘘があることを、誰もが知っていた。大人の社会だったのだ。
宇野重吉は、この時代から、老成感あり。穏やかで静かな演技。
童謡のようなしいのみ学園の歌が、香川京子の声で、今も耳に残る。(作曲は、成瀬映画でお馴染みの斎藤一郎