『二十四の瞳』

kenboutei2010-05-03

京橋フィルムセンター。2日に鑑賞。
極めて有名な映画だが、全くの初見。
僻地の島での先生と子供たちの交流、といった程度の知識しかなく、やたら名作とか感動作とかの評価が定着していることが、むしろこれまで観る気を起こさせなかった。(そういう映画は他にも沢山あるが。) だいたい、子供と先生の感動話なんて、偽善的な匂いがして、イヤだ。
ただ、最近は高峰秀子がマイブームで、ちょうど『わたしの渡世日記』も読んでいるところに、タイミングよくNFCで上映されていたので、観ておこうか、という程度の気持ちで、足を運んだだけであった。今年の連休は、ほとんど予定も入れてないしね。
 
・・・私が間違ってました。
 
途中から、涙が止まらない。盲目になった田村高広が、昔の写真を手でなぞるところで、もはや号泣を通り越し、嗚咽に近い状態になった。
こんなに泣いた映画を観たのは、いつ以来だろう。
今も、高峰秀子の先生が、不幸な境遇の少女に向かって「先生は何もできないけど、一緒に泣いてあげる。」という台詞を思い出しては、涙が滲んでくる。
美しい島と海、どこまでも遠くへ続く道、自転車に乗る高峰秀子、清らかな唱歌、無垢な子供達と戦争の影。
優れた題材を優れた演出で描ききった木下恵介監督の力量に、ただただ感嘆するしかなかった。
単にお涙頂戴を狙ったあざといセンチメンタリズムの映画とは根本的に異なる、上質の映画。
昭和29年の作品。この年は、『七人の侍』、『ゴジラ』が作られた年でもあるが、キネ旬の1位は、同じ木下監督の『女の園』であったというのも面白い。

二十四の瞳 デジタルリマスター2007 [DVD]

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木下惠介 DVD-BOX 第1集

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