ピンクタイツの衝撃〜『踊りたい夜』

kenboutei2010-04-21

♬ピンク、ピンク、ピンク。
♬ピンクタイツ〜。
♬ピンク、ピンク、ピンク。
♬タイツはピンク〜。
♬ピンク!
(ウッフーン♡)
♬ピンク!
(アッハーン♥)
・・・これは、キャバレーのショータイムで、水谷良重倍賞千恵子、鰐淵晴子の三姉妹のショーガール、その名も「ピンクタイツ」が、踊りながら唄う歌である。(一部誇張表現あり。)
神保町シアター、今回は、和製ミュージカル特集。その宣伝チラシで、頭に花飾りをつけてにっこり笑う倍賞千恵子と、小首を傾げ、美しい手足のラインを見せる鰐淵晴子の写真を見てしまうと、ちょっと忙しい時期ではあったが、その写真の映画『踊りたい夜』だけは、見逃すわけにはいかなかった。
そんな思いの観客は自分だけではなく、午後6時45分の回は、満席となった。驚いたことに、あの新宿タイガーも来ていた。(新宿タイガー、いや、「神保町タイガー」は、一番前の真ん中の席に陣取り、派手な衣装や荷物は、舞台下の隅に置いていた。タイガーマスクのお面は、上演直前になって、ようやく外した。)
さて、映画の方は・・・
倍賞千恵子の網タイツ!
鰐淵晴子のレオタード!
そして、ピンクタイツの歌!
・・・これ以上、何を望むのか。
典型的なバックステージ物で、三姉妹三様の恋物語に、ステージパパで元は売れない手品師の有島一郎が絡む。
長女の水谷良重は、父親に反発してピンクタイツを脱退、地方で荒んだ生活を送るが、サックス奏者の佐田啓二に出会い、自分を取り戻す。
次女の倍賞千恵子は、昔から好きだった作曲家の吉田輝雄と結婚、家庭に入るが、吉田輝雄が飛行機事故で死亡、再びショーに戻る。
三女の鰐淵晴子は、母親と同じバレリーナを目指し、根上淳の特訓を受けるが、周囲の偏見やステージ観の違いから、やはりショービジネスの世界に戻ることを決意。
というわけで、一度はバラバラになった三姉妹は、再び父親の下でピンクタイツとなり、大団円を迎えるのであった。
吉田輝雄の飛行機事故は、その前に一家の幸福場面を強調してから悲劇に落とすというベタな作りで、誰でも、彼は死んじゃうなと想像できる演出であった。
同じショービズ仲間である藤木孝のセクシーな踊りも、魅力的。
ところどころに挿入されるミュージカルシーンは、寸足らずのハリウッド調ではあるが、逆にそれが微笑ましい映画ともいえる。
倍賞千恵子は、寅さんの妹のイメージが強いが、もともとはSKD出身。清楚な顔つきでいながら、派手な衣装で唄って踊るそのギャップ感が、たまらない魅力となっている。山田洋次監督のものだけでなく、若い頃の彼女のこんな映画をもっと観たかった。(あるのかもしれないけど。)
鰐淵晴子のバレエシーンもたっぷり堪能。(彼女の場面は、少女漫画の世界だ。)
松竹の映画なので、ミュージカルなのに多少湿っぽいが、有島一郎一人で、東宝の明るさを持ち込んでいたのはさすが。
監督は、井上梅次。この後作った『香港ノクターン』のオリジナルがこの映画だそう。

香港ノクターン [DVD]

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オリジナルの方こそ、早くDVD化すべきであろう。