『春琴抄』

kenboutei2010-03-26

神保町シアターの乙女特集で、西河克己監督の『春琴抄』を観る。言わずと知れた、百恵・友和「ゴールデンコンビ」によるもの。といっても、百恵友和映画を観るのは、自分は初めてなのだが。昭和51年の東宝作品。
今回の谷崎の映画化は、割合原作に忠実な、オーソドックな作り。きちんと春琴の懐妊の話も出て、その後の始末についても、ナレーションで説明していた。
そういう意味では、以前観た京マチ子主演の『春琴物語』よりは、春琴と佐助の主従におけるサド・マゾ関係の匂いは、ほんのり立ち込めていた。
とはいえ、70年代の日本映画の低迷を象徴するような、テレビの長編ドラマと間違えそうな貧弱なセットやカメラワークで、何の映像的工夫もない、凡庸な文芸映画としか受け止められなかったのも、事実である。まあ、百恵と友和が出ていればそれで良い、という感じだったからなあ、当時は。(そういう時代の空気は、感じられた。)
山口百恵は、さすがに一介のアイドルを超越した存在感であるが、盲目という役柄で、ずっと眼を瞑っての演技は、その美しさを堪能するには、物足りなかった。(『春琴抄』映画化の欠点は、そこにある。)
春琴は、佐助の琴の師匠でもあるのだが、山口百恵は、いちいち琴の音色を頭を傾げリズムを取りながら聴く。いかにも音を聴いています、という演技がわざとらしく、とても音曲のお師匠さんには見えなかった。
三浦友和の佐助に、口紅をつけてもらうところなどは、美しかった。
それにしても、この春琴というのは、今で言えば、いわゆるツンデレ・キャラなのだろう。最近の女優でいえば、沢尻エリカなんかが似合うかもしれない。堀北真希も良いかも。(オールタイムで選ぶとしたら、若尾文子しかいないが。)
利太郎役に津川雅彦中村伸郎が春琴の琴の師匠役。仙人みたいな髭のメイクが珍しい。
「新スター」としてクレジットされている、榊原郁恵の登場は、かなり衝撃的であった。

春琴抄 [DVD]

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