『インビクタス』

kenboutei2010-03-17

会社帰りに、有楽町マリオン丸の内ピカデリー
イーストウッドの新作『インビクタス』を観る。
アパルトヘイト政策終焉後、大統領に就任したネルソン・マンデラと、彼が国の融合として推進するラグビーW杯での南アフリカ代表チームの活躍を描く。
マンデラ大統領を演ずるモーガン・フリーマンの企画で、イーストウッドが依頼を受けて監督したとのこと。
一言で言えば、赦しの映画。27年も拘束されていたにも拘らず、報復を恐れる白人と共に仕事をすることを選び、白人のスポーツの象徴であったラグビーのチームを応援する。その気高い姿勢に、敬服せざるを得ない。
最近は、特に日本では、とかく被害を受けた者の恨みばかりが感情的に取り上げられ、もっと高い見地からの冷静な言説が皆無に近い状況である。「許せない、許せない」とばかり言い続けるテレビ画面を見る度に、どこか言いようのない気持ちを持っていたのだが、こういう映画を観ると、まだ世界も捨てたものではないと、思わせてくれる。(もちろん、マンデラの白人融和政策も、政治家としての戦略的なものが強いのだろうが、それを超越した人格の高さがあるのだ。)
イーストウッドの演出もまた、マンデラ大統領と同じように、気高く、品格のあるものである。決して感情に訴えず、行動の事実や、登場人物の思いを静かに描くことによって、観客に判断を委ねる。俯瞰の映画。
マンデラ大統領は、家族とは離れ、娘ともうまくいっていない様子が描かれている。事実なのかもしれないが、これはイーストウッド映画の主人公(特にイーストウッドが主役の場合)には、典型的な設定であり、象徴的なものを感じた。
W杯決勝相手のニュージーランド・チームの強さを示すエピソードとして、対日本戦での記録的スコアの話が出てきたのが面白かった。
勝戦を前に、民間の飛行機が航路を変更し会場の上空を近接して通り過ぎる場面を、テロ風に演出していたのは、不要であると思った。(これも事実だったのだろうか?)