『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』

kenboutei2010-03-03

人間ドックの帰り、神保町シアターへ。今日は『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』。衣笠貞之助監督。昭和31年、大映
木曽義仲の京入りを描く。義仲をめぐる三人の女とは、巴御前京マチ子、義仲に仕える傭兵女・山吹の山本富士子、公家の姫・冬姫の高峰秀子。そして木曽義仲長谷川一夫
志村喬が実盛役。白髪を黒く染めて戦うエピソードもちゃんと入っていた。歌舞伎の『実盛物語』の後日談のようだった。(本当は歌舞伎の方が「前日談」なのだろうが。)最後は巴御前に殺された。
山本富士子は、いつもの和服姿ではなく、ワイルドな農民姿。やはりあんまり似合っていなかった。高峰秀子はお姫様役だが、後半になってやっと登場。しかもあまり仕どころがない。従って三人の中で一番目立っていたのは、京マチ子。何と言っても巴御前だものなあ。
長谷川一夫はあくまで長谷川一夫。義仲ではなく、義経を見ているようであった。
五重塔のセットの立派さなど、結構金はかかっていたようだが、こういう名画座で観ると、公開当時のゴージャスさを感じられないのが不思議。(五重塔の炎上場面だけでも、黒澤の『乱』より豪華であるのだが。)
ヨソ者が京都に住むことの難しさは、今も昔も変わらないということを確認する映画でもあった。
 
買ったばかりの高峰秀子の本に出ていた、この映画に関する本人のコメントが面白い。

溝口さんが撮るっていうんで受けたんだけど、京都へ行ったら、なぜか急に衣笠になっちゃたの。帰ってくるわけにもいかないから、イヤイヤ出た。この時のメイキャップマンが重ちゃんのお兄さんで、京さんと山本富士子さんにドウランの色を指定しても、勝手にもっと白い色のドウランを塗ったり付け睫毛を付けたりするから、重ちゃんのお兄さん怒っちゃてね、重ちゃんとおんなじ性格だから。私だけ言うこときいてメイキャップをしたから、一人だけ御鬢頭盧みたいな、黒いこけしみたいな顔になってるの。長谷川さんは相変わらず白塗りだしね。

高峰秀子

高峰秀子

・・・なるほど、そういう映画だったのか。(溝口映画の高峰秀子を是非観たかったなあ。)