『ロスト・イン・トランスレーション』

kenboutei2010-02-27

コッポラの娘が監督した『ロスト・イン・トランスレーション』を観る。
来日した米国の中年映画俳優と、同じく東京で仕事をしている米国人についてきた若妻が、お互いの疎外感から惹かれ合う恋愛映画。
映画俳優がビル・マーレイ、若妻がスカーレット・ヨハンソン
別に日本でのロケだからというわけではないが、テーマといい、進行といい、どこか日本の映画っぽい。日本の私小説家が好んで描くような世界。
旅先での奇妙なアバンチュールは、孤独の街・東京だからこそ成立したのかもしれない。これがパリやニューヨークだと、二人は簡単に関係を結んでいたような気がする。
ソフィア・コッポラが描く東京は、外国人としての感覚が色濃く反映されている。洋書店で見かける東京のガイド写真集のような美しさ。湿り気があって、艶やかな映像美。かなり昔に観た、ヴェンダースの『東京画』も、こんな感じだったなあ。
唐突に挿入された、ビル・マーレイが朝焼けの富士山に向かって打つゴルフ・ショットが、何とも美しい。話の流れから行けばカットしてもおかしくない場面であるが、つい北斎を思い起こさせるほどの富士の微妙な色合いの美しさは、監督もきっと捨て難かったのだと思う。
藤井隆の『マシューTV』がそのまま出てきたのには驚いた。
人妻役のスカーレット・ヨハンソンが美しい。これまで彼女の出演した映画は全く観ていなかったのだが、ある時期映画館に行くと頻繁にかかっていた、ウディ・アレンの映画(『それでも恋するバロセロナ』だったかな)の予告編でのゴージャスなイメージが強く残っていたので、この映画での幼さと儚さが同居しているような美しさは、とても新鮮であった。(逆に言うと、こんなに初々しかったのに、何であんな派手なイメージの女になってしまったのだろう・・・)

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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