太田記念美術館『名優たちの系譜 -幕末・明治の歌舞伎と現在-』

歌舞伎座へ行く前に、表参道。太田記念美術館でやってる『名優たちの系譜 -幕末・明治の歌舞伎と現在-』を鑑賞。
タイトル通り、幕末から明治の役者絵の展示。まさに自分にぴったりの企画で、時間が許せば、いつまでもずっと観ていたかった。
どの絵も保存状態が良く、色鮮やかな歌舞伎の世界が再現されていて、江戸時代の妖し気な芝居小屋へと、想像を膨らませてくれる。
国周の具足屋版大首絵などは、実に見事で、一枚でもいいから手に入れたいものだ。
役者の顔だけでなく、衣装に描かれた絵柄の表現などの、彫りや刷りにも数々の技巧が凝らされており、なるほど、幕末は浮世絵技術の絶頂期だったのだなあと、改めて確認できた。
今回特に印象に残ったのは、芳幾の「俳優写真鏡」。菊五郎芝翫田之助とあったが、当時の写真を元に淡い色彩を入れて描かれているのが、結構リアルであると同時に、そのセピア色が古めかしい時代を醸し出していて、何ともいえず良い感じだ。五代目菊五郎や三代目田之助の実像が、かなり具体的に目に浮かんでくるようでもあった。

田之助については、他に荒獅子男之助の絵があったのも、驚いた。真女形だと思っていたので、赤っ面で隈取りの役をやっていたこと自体、新鮮であった。どんな芝居をしたのだろう。絵自体は結構可愛かった。
(↓これは、今回の展示のものではなく、早稲田の演博のアーカイブにあった、田之助の男之助。実際はこれよりキュートな絵だった。)


この日は、新藤茂先生の「役者絵の楽しみ方」という講座もあって、こちらも面白かった。(時間が押して、歌舞伎座に着くのがぎりぎりであったが。)