9月文楽公演 一部

kenboutei2009-09-06

『鬼一法眼三略巻』
国立劇場小劇場。四段目の「一條大蔵譚」を除いた半通し。
二段目の「書写山」は、弁慶誕生の話で、単純に面白く、楽しい。歌舞伎でもやってほしい。(稚気溢れて暴力的な弁慶には、やはり團十郎が一番かな。海老蔵ではリアル過ぎる。)
三段目「菊畑」も、その前に「清盛館」で虎の巻の重要性や登場人物の関係がはっきりとわかるので、歌舞伎のような様式美を楽しむだけで後はじっと耐えているような場とは違い、ストーリーの意外性に飽きることがなかった。何しろ鬼一は最後に天狗姿になるのだから。
一方で、鑑賞教室でもお馴染みの「五條橋」は、何度か観ているせいか、比較的退屈であった。
床では、やはり「菊畑」の切、咲大夫、燕三が最大の聴きどころ。畳み掛けるような燕三の鋭く力強い撥捌きも見事だし、圧倒的な声量で語りきる咲大夫も立派。こういう豪快な語りっぷりは、今では咲大夫くらいしかいなくなったなあ。(それはそれで寂しい。)
若手の睦大夫、希大夫、芳穂大夫が、真っ直ぐな語り口で好印象を持った。
半通しとはいえ、やはり楽しい文楽の通し狂言。特に牛若丸と弁慶の物語は、こういう浄瑠璃を通して、庶民に親しまれていったのだろうなあ。