八月納涼歌舞伎 一部・二部

kenboutei2009-08-23

一部

天保遊侠録』真山青果作。勝海舟の父親小吉が、息子の将来のために猟官活動をするが、もとより無頼な性分から、接待の席で忍従できずに結局爆発するというお話。
耐えに耐え、堪忍袋の緒が切れて一気に溜飲を下げるというドラマの王道は、わかりやすいけれど使い古されていて、感動からはほど遠い。筋書のコラムに紹介されていた、坂口安吾『青春論』の中の小吉の方が、まだ面白い。
小吉に橋之助。甥に勘太郎。小吉の昔の恋人が扇雀。小吉の義理の姉が萬次郎。
萬次郎が、写実っぽい役者だらけの中で、一人だけ古風で良かった。
六歌仙容彩』三津五郎の「六歌仙」。今月三部の中で、一番(というか、これ一つだけ)期待していたのだが、長かった、眠かった・・・。印象に残っているのは、遍照と喜撰くらいかな。福助の小町は、絵から抜け出たような美しさであった。勘三郎のお梶。
1時間30分。こんなに大掛かりな舞踊とは知らなかった。・・・漫然と観ていたら、漫然とした感想しか残らないということが、よくわかった。反省。
二部

真景累ヶ淵福助の豊志賀は、前にも一度観ているが、ますますドリフ化(というか、志村化)している。途中で上から盥が落ちてきても、舞台が回って千鳥の合方をテンポアップしたようなマーチが響き、若手アイドルが歌い出したとしても、決して不思議ではない。
最後は、あんな風にびっくりさせて終わるんだったかなあ。
勘太郎の新吉は、やさしさが滲み出ていて、似合っていた。お久の梅枝が、だんだん女形らしくなってきた。
船弁慶勘三郎船弁慶』は初めて。今月の演目では一番良かった。特に前半の静御前が好きだ。正対したときの、形の良さ。壷折り姿でも腰のラインに色っぽさが出ているのも面白い。知盛の霊は、派手さを控えた動きに好感。花道の引っ込みもキレがあった。