赤坂ACTシアター『RENT』

kenboutei2009-08-12

『RENT』の日本公演。
別段、来日の度に繰り返し劇場に通う程のレントヘッズではないのだが、オリジナル・キャストのアンソニー・ラップとアダム・パスカルが出演すると知ってしまった以上は、駆けつけずにはいられなかった。色々考えていた夏休みの予定も棚上げにして、とにもかくにも赤坂ACTシアターへ。午後2時からのマチネー。切符は数日前にネットで予約、セブンイレブンで受け取る。
冒頭、ロジャーに続いて、マークのアンソニー・ラップが登場した時、観客の歓声の中で、思わず胸に込み上げるものがあった。
やはり自分にとっては、オリジナルが一番なのである。映画公開後に来日した厚生年金会館での日本公演はちょっと物足りなかったのだが、今日はマークの第一声を聴いただけで、もう感動してしまった。
次から次へと怒濤のごとく繰り出される名曲の数々、それを、オリジナルの二人を中心に、パワフルに歌い上げる。最近は遠ざかっていたのだが、あっという間に『RENT』の熱い世界の中へ、引きずり込まれていった。
全体的に感じたのは、今回の舞台は、オリジナルの二人がいるせいか、初演時のイメージ、或いは、ほぼオリジナル・キャストで再現された映画版のイメージを、かなり忠実になぞっているということ。マークとロジャー以外の登場人物も、映画やオリジナルCDですっかり耳に馴染んだ曲のイメージそのままに歌い、演じている。いわば、オリジナル・キャストへの、愛と敬意を感じる舞台演出であった。
ただそのせいか、アンソニー・ラップとアダム・パスカルの存在感があまりにも圧倒的で、他の役者はこの二人の胸を借りて必死に演じている感じ。80年代のニューヨークの若者同士というには、二人とその他の格差がありすぎた。
だから、ミミに対してつまらないわだかまりを持ったりする、ロジャーの「へたれ感」も、今のアダム・パスカルでは、立派過ぎて、むしろミミへの包容力の強さをより感じるし、マークのアンソニー・ラップは、そういうポジションとはいえ、傍観者としての老成感がやや増しているのも否めない。
まあそれは、伝説の二人を引っ張りだしての公演である以上(そして、それを期待している以上)、贅沢で身勝手な感想ではある。自分自身、二人で歌い合う『What You Own』を生で聴いて身震いしているわけだし。
とにかく、会場全体が、オリジナルの『RENT』を存分に体験しようという雰囲気に満ち溢れていて、曲が終わってからの拍手、歓声、口笛は、厚生年金会館の時とは比較にならない程であった。もっとも、これでもまだ平日のマチネーのせいか、大盛り上がりというわけでもなさそうだが。
アンソニー・ラップもアダム・パスカルも、実年齢の割には若々しい。声も素晴らしく、生で聴くことができて本当に良かった。(初演時のニューヨークで、アダム・パスカルの方は聴いているはずなのだけどね。)
マイクの調整が悪いのか、アダム・パスカルの声が大きすぎるのか、ロジャーの音が割れる場面が何度かあった。また、「One Song Glory」の時のバック・バンドのエレキギターの出だしがうまくなく、これもちょっと残念。
ミミはなかなか美形。お尻の形も良かった。
「La Vie Boheme」でのモリーンの「尻出し」は、テーブルの左端だったので、あまり目立たなかった。(尻の感想しかないのか。) ライブショーの方では、「over th moon」と言う時、左サイドに体を曲げて三日月型になるのが良い。
エンジェルは小柄で、ちょっとプリンスに似ていると思った。
「Seasons of Love」のソロのグウェン・スチュアートが、やはりオリジナル・キャストだったとは知らなかった。
全てが終わった途端、一斉にスタンディング・オベーション。役者たちは一旦引っ込んでから一度だけ登場し、軽く挨拶。その後、バンド演奏がしばらく続いて、終了。
会場の赤坂ACTシアターは、大きい割には舞台と観客席の距離が近い。今日は1階後方左端側だったのだが、結構観やすかった。舞台両袖の字幕も邪魔にならない。(ただ、前の座席の若者の頭は邪魔だったが。)
字幕は、厚生年金会館の時と同程度の内容。今回は、それは無視し、できるだけ舞台に集中するように心がけた。

・・・全てを観終わって、最も感じたのは、確かに素晴らしい舞台で盛り上がってもいたのだが、本来『RENT』は、その演出や内容からいって、大劇場でショー化するよりは、小さな芝居小屋で、観客と密接になって上演するのが最も相応しいと、改めて認識したことである。(これもまた身勝手な感想なのだが。)そう思うと、自分が何も知らずに観に行っていた97年のネダーランダー劇場を、もっとしっかり記憶に留めておくべきだった。
そしてもう一つ。
・・・このシンプルにして多彩な舞台を、クリス・コロンバスはよくぞ完璧に映画化したものだ。

(↓ 初演時の映像らしい。MacBook Proにして、動画も快適になったので、ちょっと載せてみよう。)

 
(↓ これは昨年のトニー賞のステージ。)

(↓ ブロードウェイのラスト公演のDVDは、さっそく注文。)