6月新橋『NINAGAWA十二夜』

kenboutei2009-06-07

新橋演舞場で、『NINAGAWA十二夜』。初日昼の部。
先頃のロンドン公演の凱旋興行。
東京だけでもこれが3回目、演じる役者も慣れたもの。観ている客も慣れたもの。
劇場が新橋演舞場となり、歌舞伎座とは違った雰囲気になるのではないかとも思っていたのだが、座席が舞台に近かったせいもあって、その辺はよくわからなかった。(菊之助を間近で観られたのはよかったが。)
嵐で難破する場が、船のセットと廻り舞台、浪布のコンビネーションが見事で、手際良く処理しながら、嵐の迫力をうまく表現していた。菊之助の琵琶姫は、柱巻きにはならず、両袖を下にたらした格好で幕となる。
二幕目序幕での菊之助の舞踊は、すっきりと美しい。舞台後方に長唄囃子連中。
このロンドン公演バージョンは、ツケも多用し、歌舞伎味をできるだけ強調している。その分、チェンバロの旋律などは控え目となり、これまでの2回の公演で印象的だった、メルヘンチックさが、多少犠牲になったようだ。
上演時間も短縮され、ラストはただの謎解きみたいになってしまった。
初演時は蜷川演出によって新しい歌舞伎の息吹きを感じ、二回目は、菊五郎劇団が「歌舞伎の引き出し」で蜷川演出を歌舞伎側に引き寄せ、今回は、それをさらに「カブキ」風に味付けし直したといったところか。
ただ、その外国人向けの味付けは、一種の観光仕様でもあり、極限まですっきりしてしまって、余韻のようなものもなくなり、全体的には薄味の印象を受ける。寿司屋のカリフォルニア巻きみたい。
と同時に、菊五郎左團次はじめ、どの役者も澱みない台詞廻しで、役を完全に自分のものにしており、これは既に菊五郎劇団の一つのレパートリーになっているということも、初日にして実感した。
どうしても気になって仕方のないフェイスマスクも、ここまで堂々と見せると、何だか普通の演出のようにも思えてきて、拘る自分が間違っているような気にもなった。(カーテンコールでは、ど真ん中で拍手を受けていたし。)
ステンドグラス風の枠組みをあしらった額縁上の舞台装置が素敵。
翫雀の安藤は、髪の一部を紫に染めてウェーブをかけており、彼の母親の髪型を見るようだった。