『現代インチキ物語 騙し屋』

kenboutei2009-03-28

神保町シアターで、増村保造監督の『現代インチキ物語 騙し屋』を観る。
舌先三寸、あの手この手で、金を騙し取る大阪のペテン師チームの活躍(?)を描く。
相手に納得ずくで金を払わせているので、決して泥棒のような犯罪ではないという独特のレトリックと矜持を持ち、様々な役に扮しての行動は、『スパイ大作戦』も顔負けな、リスクの伴うハードワーク。こんなに大変ならむしろ普通に仕事していた方が良いのではと思うほど。やっていることは、昨今の振り込め詐欺と同じであるのだが、とにかく明るく前向きで、敗戦後の日本で生き抜いてやるという強烈なバイタリティに溢れていて、つい、その犯罪を応援したくなってしまうのであった。
チームのボス役の、曽我廼家明蝶が強烈。リーダーらしく、いちいち自分たちの行動を正当化する屁理屈を並べ立てるのだが、その関西弁が実に生き生きとしていて面白かった。あまり知らない役者だったが、なかなかユニークなキャラクターで、もう一人の個性派俳優である伊藤雄之助と並んでも、決して役の柄で負けてはいなかった。強引で絶対的なリーダー振りは、ドリフのいかりや長介にも通じ、今ならSETの三宅裕司に似ているとも思った。
万博前の大阪の、工事現場の土煙と、屋台の湯気、路地裏の喧噪などがごった煮となった描写の中で、返還前の沖縄の話が出たり、傷痍軍人が寄付を求めて歩いているなど、戦後がまだ終わっていない時代の空気を、強く感じることができた。
山本直純の音楽も、ギラギラしていてこの映画に合っていた。
原作は藤本義一という、ある意味、とてもわかりやすい映画。