『女の勲章』

kenboutei2009-03-23

21日の神保町シアター、2本目。吉村公三郎監督の『女の勲章』。『女系家族』同様、山崎豊子原作の大映作品。
船場のいとはんが作った小さな洋裁学校を、一大チェーン・スクールに発展させていく裏での、男女の愛憎劇。
洋裁学校の経理を牛耳り、新しく学校を起ち上げる度に、そのポストを餌に女と関係を結んで行く、田宮二郎が凄い。理事長の京マチ子、デザイナーの若尾文子、叶順子、中村玉緒らの間を飄々と渡り歩く。レンズが六角形の眼鏡が、不気味に似合っていた。
女性側も自らの出世と引き換えに身体を許しているわけで、お互いに打算ずくの行動であるはずなのだが、ひとり京マチ子だけは、自分の他にも同じことをされている女がいること(しかもそれが自分の教え子である)に堪えられず、この映画でも相変わらず(?)優柔不断な森雅之への失望も加わって、やがて悲劇へ突き進む。
相変わらずと言えば、若尾文子もその一人。美貌と色香の裏側で、冷静に男を乗り換える逞しさ。
一方、中村玉緒は、おっとりとしたお嬢さんのようでいながら、実は一番しっかりしているという設定で、役者のイメージとのギャップからの意外感を誘う。実際の玉緒にもこの計算高さがあれば、勝新の晩年も違っていたのになあ。
脚本は新藤兼人だが、特に前半は、舞台設定の説明に忙しく、映画としては流れがぎこちない。
それにしても、この映画の中のファッションショーの野暮ったさに比べると、最近の、東京ガールズ何とかなどは、一体どこの国のことだろうと思えてくる。(もはや、同じ国ではないのだ。)

女の勲章 [DVD]

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