広瀬正『エロス』

読了。

エロス 広瀬正・小説全集・3 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

エロス 広瀬正・小説全集・3 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

副題に「もう一つの過去」とあるように、「あの時、ああしていれば」という、ifの世界を真っ正面から描く。
作者得意の(?)、昭和10年代の東京が舞台なので、『マイナス・ゼロ』と世界が重なる。『マイナス・ゼロ』で登場した、大工の一家や、当時の広瀬正少年が再び出てくる遊びもある。
ヒロインの歌手のモデルは、淡谷のり子なんだろうなあ。
『ツィス」では聾、『エロス』は盲が重要な登場人物となる。そういう設定が好きなのかな。
オチをたった一行で決めてしまうので、一日で一気に読み終わるのが正しい読み方かもしれない。
視点の複線化で、そのオチに余韻を持たせているのがミソ。