紀尾井ホール・長唄

kenboutei2009-02-17

今年度2回目の『江戸音楽の巨匠たち』。
今日のテーマは長唄。富士田吉治と四世杵屋六三郎を取り上げる。
対談は、竹内道敬と、徳丸吉彦。竹内先生、前回の反省からか、今日は時間管理が割合しっかりしていた。
18世紀半ばに活躍した富士田吉治が作った曲は、その年譜によると、「鷺娘」や「吉原雀」など、今もお馴染みのものがある。(といって、即座にその曲調が浮かぶわけでもないのだが。)
富士田吉治は、色子あがりということで、そのことが、長唄の成り立ちと深い関係がありそうだというのも、興味深い。
四世杵屋六三郎の方は、19世紀前半から後半、こちらも「勧進帳」をはじめ、多くの曲が今も残っている。
竹内先生によると、こうして吉治や六三郎が最初に作った曲が、今に至るまで繰り返し演奏され続けているところが、ヨーロッパ音楽とは異なる、江戸音楽の面白さだという。(もっとも、徳丸先生は、促されて頷いてはいたが、あまり同調していないように見えたけれど。)
第二部は、六三郎の代表作の方からで、『吾妻八景』。三味線・杵屋六三郎(当代=13世)、唄は杵屋禄三。
途中で佃の合方や砧の合方などが入る。歌舞伎の下座音楽でも聴いてるものよりも、華やかに聴こえる。
続いて、吉治の代表作として、『隈取安宅松』。三味線・杵屋五三郎、唄・東音宮田哲男の人間国宝コンビ。他に小鼓、大鼓、笛も入る。
「旅の衣は篠懸の」と謡曲「安宅」そのままの出だしだが、その後は、弁慶と里の子が戯れる、ほのぼのとした詞章。藤舎呂船の鼓が、この詞章にぴったりの柔らかい音色で、とても良かった。
杵屋五三郎、前回の常磐津英寿と同様、歌舞伎チャンネルの「芸に生きる」では見たことがあったが、実際の舞台は、これが初めてだと思う。ただ、他の三味線や鳴り物に気をとられ、あまり印象に残らなかった。
 
地下鉄の乗り継ぎを誤り、開始直後にようやく辿り着く。行きも返りも弁慶橋を渡る。松緑に「紀尾井町!」の他に「弁慶橋!」と大向こうが掛かる由来を、確認。