『力道山』

kenboutei2008-11-12

近所の飲み屋のママが、この映画に所縁があり、次に行く時の話題になるだろうと、先日、吉祥寺のブックオフで購入。
先月は全く映画を観る余裕もなかったのだが、日常も少し落ち着き、今日、ようやく観ることができた。
言わずと知れた力道山の、伝記映画。しかし日本の作品ではなく、韓国映画で、主役の力道山も韓国人俳優が演じているのが、公開当時も話題になった。
残念ながら、ストーリーに起伏なく、いくつかのエピソードが断片的に綴られていくだけなので、力道山の故郷への屈折した思いや、プロレス・ビジネスに駆り立てた根源的な情熱などは、なかなかストレートには伝わってこなかった。隔靴掻痒という感じ。脚本が悪いのだろう。
主演のソル・ギョングはなかなかの力演で、時々ボソッと呟くギャグも面白かったのだが、頑張ったとはいえやはりカタコトの日本語は、不自然さを拭いきれず、日本人の観客としては、違和感を抱かざるを得なかった。(あんなにカタコトでは、当時誰もが力道山を日本人だと信じていたことさえ、嘘っぽく見えてしまう。)
新田建設社長に藤竜也。久しぶりに観るが、相変わらず渋い。(背中の入墨は馬の絵であったが、実際は違っていたらしい。)
力道山の妻役は中谷美紀。何だかリアリティのない女性であった。
当時の日本の風景に、どこか違和感が漂っていたのは、やはり外国人から観た日本のイメージであるのと、CGを多様したせいだろう。今後もこんな感じの日本が映画には登場するのだろうな。(今の日本人も、ある意味外国人のようだし。)
パトロンである社長との関係は、なかなか面白かった。力道山は、東富士に脅威を感じていたのか。
ヤクザに刺される場面も、力道山の方が相手をあんなにボコボコにしていたとは思っていなかった。あれでは刺されても仕方がない程の暴れようであった。
プロレス・シーンは、まずまずの出来であったが、あの時代にラリアットなどが出てくるのは、プロレス・ファンは納得しないだろう。武藤敬司がハロルド坂田、橋本真也が東富士、船木誠勝木村政彦で出演。特に橋本真也は、これが遺作となっただけに、感慨無量。(特典映像で、橋本真也追悼のスペシャルメイキングが入っている。このDVDの価値は、そこにあるかもしれない。)
それにしても、木村との一戦はあるものの、ルー・テーズもデストロイヤーも登場せず、リキパレスは会話の中だけ、アンダーグラウンドの世界にも殆ど触れず、伝記映画という意味では、何もかも中途半端な出来であり、これで2時間30分は、無駄に長い。
ママとの会話は弾まないだろうな。