『メラニーは行く!』

kenboutei2008-08-31

いかにも特定の世代を狙ってつけた、しょぼい邦題ではなく、『Sweet Home Alabama』というオリジナル・タイトルに惹かれて手にしたDVD。
その原題通り、主人公のメラニーは、アラバマから単身ニューヨークに行き、ファッション・デザイナーとして成功、ハンサムなニューヨーク市長の息子と婚約するところまで行きつくが、実は故郷にはハイスクール時代に結婚した幼馴染みの夫がおり、フィアンセに気づかれぬうちに正式な離婚手続をとるべく、数年振りにアラバマへ帰るという設定。
恋の行方よりも、都会から田舎に戻った者が巻き起こす、「地元」の人間との感情の軋轢が面白い。
高校くらいまでは共に田舎で暮らし、進学や就職で都会に旅立つ者と、何らかの事情で地元に残った者との間で、時間の経過とともに広がっていく溝や違和感、妙なわだかまりなどは、自分も田舎育ちの都会暮らしを経験して感じたものだが(それは今でも帰省する度に感じる)、アメリカでも同じなんだなあ。
ヒロインのメラニーが、故郷で泥酔し悪態をつくのに、半ば呆れながらも、「昔もこうだった」と受け入れる古い仲間達。愛憎半ばする、田舎独特のコミュニティを、この映画は、うまく描き出していた。
アメリカにおける南部と北部の対立や、英語の訛りのニュアンスなどをもっと深く知っていれば、更に楽しめただろう。
一方で、都会のフィアンセ、田舎の元(?)ダンナとメラニーとの三角関係は、あまりうまい演出ではなかった。男二人が共に好人物として描かれているため、観客としては、どちらかに肩入れしにくい。結局は納まるところに納まるのだが、何となく消化不良感もあった。
ところが、DVDの特典映像で監督のアンディ・テナントが明かしたところによると、メラニーの恋敵として、エリンという女性がいたのだが、試写での反応がよくなかったので、その女性の登場シーンは、全てカットしてしまったという。
カット場面も特典映像にあったが、それを見ると、実に魅力的な女優であり、また、彼女の存在があるから、メラニーの最後の結論も受け入れられるような仕組みの人物相関図になっていたはずであり、その重要人物を全くカットしてしまって、よく作品として成り立ったものだと、逆に感心してしまった。
他にも、この監督は、当初のエンディングがやはり不評で撮り直したことを告白しており(実際に元のエンディングも特典に入っている)、映画を作る過程を知るには興味深い部分はあるが、逆にそれを知ることで、作品の完成度の低さ、監督としての力量の程度も露呈してしまった感がある。特典映像によって、本編の評価が下がってしまうという、希有なDVDである。
ニューヨークの女市長に、懐かしのキャンディス・バーゲン。観ている時は、ずっとダイアン・キートンだと思っていた。
オープニングのメラニーの子供時代の役で、ダコタ・ファニング。子供同士のキスシーンが、まるで大人のシチュエーションで、ちょっとドギマギする。
メラニーは、リース・ウィザースプーン。邦題では、彼女の名前が冠としてつけられている。そういう位置付けの人らしい。(彼女よりも、カットされた女優、キャサリン・タウンの方が気になるなあ。)

メラニーは行く! 特別版 [DVD]

メラニーは行く! 特別版 [DVD]