十二月文楽・鑑賞教室と若手公演

kenboutei2007-12-16

十二月恒例の、国立小劇場での文楽鑑賞教室と若手公演。今日が千秋楽。今回は、どちらも面白かった。
鑑賞教室は、『寿柱立万歳』の後に、『沼津』
『沼津』は、Bプロで、前が呂勢・清二郎、後が千歳・富助という、魅力ある組み合わせ。特に、後半の千歳が良かった。平作の語り方が、所々、住大夫に似ているように感じた。一方、呂勢は低調。このところ、あまり目立った活躍をしていないのが心配。
人形では、玉也の平作、後半の千本松原が良かった。清之助のお米が、かつては廓にいた女性のしっとりとした色気が漂い、上出来。玉女は人形の着物の着こなしが良くない。
解説は相子大夫と清𠀋。メールのメッセージを三味線の感情表現に置き換えた解説は、なかなか面白かった。
2時から若手公演。
『輝虎配膳』たぶん初見。武田信玄上杉謙信川中島の合戦にまつわる話。大河ドラマ風林火山』もちょうど今日が最終回、実にタイムリーな企画であった。
軍師山本勘助を上杉方に迎え入れようと、勘助の母親越路を籠絡しようとし、輝虎(=謙信)自らが、越路に給仕配膳。
人形の動きなどに目立つものもなく、あっという間に終わってしまう一段だが、三大婆の一人越路の活躍や、勘助の嫁が吃りで、琴を弾いて訴える様などは、なかなか面白かった。
三段目だが、人形一人一人に太夫がつくのは、昔からそういうものなのだろうか。
新大夫の輝虎に力がこもっていた。一人だけ、汗びっしょり。
『新版歌祭文』「野崎村」の前に「座摩社の段」がつき、「野崎村」も端場から出す丁寧な演出。これにより、お染・久松の関係もより鮮明になり、実に面白かった。やはり一度は原作に忠実な演出を観ることが大事だなあ。(原作を読めば済む話かもしれないが。)
特に、母親に、お光が尼になったことを知らせまいと、母親の質問に嘘をつき、その場の一同が皆、涙を堪えている場面は、ぐっと胸が詰まる思いであった。
最後に語った文字久がうまい。特に久作の語りが良かったのは、「沼津」の千歳大夫と同じ。いずれも、住大夫の稽古の成果なのだろう。
また、錦糸の三味線が印象深い。一つ一つの音色が、心にしっかりと響いた。
人形ではお染の簑二郎、お光の清之助、共に良かった。
「またかの野崎村」と思っていたが、記憶に残る舞台となった。歌舞伎でも同じ演出を試みてほしいものだ。
「座摩社」は、亡くなった貴大夫に代わり、咲甫大夫が出演。