今日の文楽放送

NHKハイビジョンで、文楽忠臣蔵の通しを10時間にわたって放送するという、画期的な試み。平成16年11月の、大阪文楽劇場での公演を中心としていた。この公演は、自分も遠征していたので、思い出深い。
ところが、四段目の「判官切腹の段」だけは、平成12年9月の国立劇場が放送された。
大阪の時のパンフを確かめると、この時の床は、十九大夫であり、要するに、先頃横領で廃業してしまった十九大夫の場を差し替えた、ということらしい。(平成12年の太夫は咲大夫。三味線はどちらも富助であった。)
反社会的行為の当事者を出すのは、ここまでの画期的な試みでも無理だったのだろう。非常に残念。
十九大夫はともかく、この場の玉男の由良助を観られないのが、何とも惜しいのである。この時の玉男が、切腹した判官から懐剣を取るところの、極めて周到で丁寧な人形の遣い方は、今も脳裏に残っている。
そして、これが玉男の最後の四段目の由良助だったのだ!
その映像が、お蔵入りするとは・・・。
ほとぼりが覚めたら(?)、何とか放送してほしいものだ。
それにしても、このまま十九大夫がNGとなってしまうと、例えば今年9月の「丞相名残」などはどうなるのだろう? この時の十九大夫はなかなか良かったし、それよりも何よりも、富助の三味線や、玉女の菅丞相が道連れとなって観られないのは、大きな損失である。
本来、その人間の行為と、過去に残した芸術とは別のものだろうに。