前進座・五月国立公演

kenboutei2007-05-13

新橋から三宅坂へ。タクシーは遠回りして、わざわざ赤坂方面から入り、余計な金と時間がかかった。
五月の自分の土日のスケジュールを考えると、今日、新橋演舞場とハシゴする以外に観る機会は作れない。当日券で一等一階席。
『毛抜』嵐圭史の粂寺弾正。その風貌は、長十郎を彷彿とさせるが、ゆったり感やスケールの大きさは、やはりまだまだ。見得の型などは、しっかりしていて好感を持てた。
時々、眠くなり、あまり印象に残らない舞台ではあった。新橋演舞場の荒事も眠かったが、つまらないから眠いのか、眠いからつまらなく感じるのか、どっちだろう。
新門辰五郎これは面白く、眠気も覚めた。前進座の、前進座らしい熱気と団結力ある芝居。
以前、翫右衛門の辰五郎をビデオで観たが、その畳み掛けるような台詞廻しのイキを、孫の梅雀がしっかり受け継いでいることに感心。ところどころ、もたつく場面もあるが、久しぶりに台詞術の面白さを堪能した。菊五郎劇団が同じ芝居をしても、ここまではできないのではないだろうか。(そういえば、今月の歌舞伎座では菊五郎劇団が『め組の喧嘩』を出している。共に江戸っ子の喧嘩が眼目。かつては『髪結新三』も同月競演となったことがあるが、これも松竹がわざとぶつけてきたのだろうか。)
会津小鉄藤川矢之輔。梅雀に比べると、やや迫力不足。
絵馬屋の勇五郎の中村梅之助が自在な演技で、この芝居の一種の狂言廻しの役割を担っていた。ベテラン役者が台詞につかえた時も、芝居の流れに沿ったアドリブを出すなど、痛快。(しかし、この役を昔は長十郎がやっていたのだ!)
祇園さまは京都の宝だ、京都の宝は日本の宝だ。」
31年振りの再演とのことだが、見事に前進座の財産を引き継いだものとして、記念すべき舞台となった。まさに、「『新門辰五郎』は前進座の宝だ。」
筋書の役者紹介の写真などが、斬新で面白い。(長十郎についてもわだかまりなく語っているのも、興味深い。)