昭和館・手塚治虫と玉音放送

国立を出て、もう雨もあがっていたので、徒歩で皇居沿いの公園の桜を眺めつつ、千鳥が淵を抜け、九段下へ。
桜はまだ五分咲きにもなっていなかった。午前中の雨のせいか、花びらが全て下を向いている。上空から落ちてくる雨だれの抵抗を最小限にしているわけで、なるほど花も生きているのだなあ。
九段下で、昭和館に立ち寄る。
「手塚治虫の漫画の原点〜戦争体験と描かれた戦争〜」という企画展をやっており、無料でもあったので、ちょっと覗いてみた。
だいぶ歩き疲れていたので、ざっと回った程度にとどめる。手塚治虫の直筆漫画の展示よりも、手帳に書かれた昆虫の精密なスケッチや、神経質なほど細かく几帳面な手塚の筆跡の方に興味を覚えた。
もっと興味を惹かれたのは、手塚治虫の戦争体験というテーマに関連して展示されていた、終戦時(8月15日)の朝日新聞掲載の天皇終戦詔書記事と、その玉音放送を聞けたこと。
特に玉音放送の録音は、非常にクリアで、初めて全文を天皇の声で聞く事ができた。(今までは、よくテレビでやる、「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」くらいしか知らなかったしね。)
この玉音放送を、そこに展示している全文を目で追いながら聞いていると、これが戦争に負けた国の姿なのだなあ、という実感が込み上げてきた。
天皇自らが、「民族の滅亡云々」と語っているその緊迫感は、当時のニュース映像の比ではない。
もう戦後も60年以上、ついつい忘れがちだが、今の日本の原点がこの玉音放送にあることを、時々思い出してもいいのかもしれない。
それにしても、詔書の文は、読めない字が多い。
(後でネットで調べると、案外簡単に聞けるのであった・・・→玉音放送