ギメ美術館所蔵 浮世絵名品展

kenboutei2007-02-25

太田記念美術館「ギメ東洋美術館所蔵 浮世絵名品展」へ。今日が最終日。
実は昨日の土曜日にも一度赴いたのだが、午前11時ですでに90分待ちという状態になっていて、諦めて帰ったのであった。(表参道には開場時間より前に着いていたのだが、読みを誤り、近くでのんびりと朝食などをとっていたのが失敗であった。)
そこで今日は気合いを入れ直し、午前9時に出発、9時30分到着。それでも既に十数人程は集まっており、行列となって待っていたが、10時30分の開場を前倒ししてくれ、10時10分、中に入れた。
一番の話題は、ギメ美術館に最近寄贈された北斎の「龍図」が、太田記念館所蔵の「虎図」(「雨中の虎」)と対をなしていることがわかり、その里帰りとなったということ。
入館すると、さっそくその一対の掛軸が、奥の畳の間で待っていた。
北斎の虎も龍も、最近のいくつかの展覧会で目にしている。虎の方は、サックラー美術館で観た雪の中に浮遊する、「Tiger in Snow」(「雪中虎図」)が印象的だった。(↓)

今回の虎図も「雪中虎図」同様、北斎晩年90歳の作。(↓)

虎の目が笑っているようで、独特のユーモア感を出しているのも同じであった。「雨中」とあるが、あまり雨は強調された描き方はしていない。
龍の方は、虎よりも多くの絵を観ているが、これまでに観た北斎の龍は、その筆致の鮮やかさ、筆の勢いや軽やかさに感心していたが、今回の「龍図」は、どちらかというと静謐・重厚な感じがした。これも90歳の作品で、北斎のバイタリティには改めて驚嘆するより他はない。
地階で上映されていた10分程のビデオでも、この龍虎が対幅であることが強調されていたが、対で描かれて(或は数枚のセットの場合もある。)、それがバラバラになるのは、浮世絵・肉筆画ではそれほど珍しいことではないはずなので、ちょっと大袈裟なような気がした。
それよりも、この龍図以外の、ギメ美術館の貴重な所蔵品を鑑賞できたことの方が、大いに意義あることであった。
個人的には、歌磨の役者絵を観られたことが嬉しかった。初代市川男女蔵と初代中山富三郎の二人立だが、同時期の写楽や豊国との違いがわかって面白い。男女蔵の特徴ある鼻の形や口の曲がり方などは、歌麿もやはり同じような描き方をしていた。中山富三郎の方は、写楽のぐにゃ富とは随分印象が違う。
ちょうど正午に会場を後にする。
展示期間中、作品の入れ替えが3度もあったらしく、漏れなく全部観るには4回も足を運ばなければならないのは、狭い会場なので仕方がないだろうが、購入した目録を観ると、見逃した必見の作も多く、前半だけでも行くべきだったと、今になって後悔。
売店で、コースターやマグネットの他、龍虎の特注複製画も、勢いで買ってしまった。
太田記念美術館には、たぶん10年以上来ていなかった。帰りに気がついたが、半蔵門線を使えばJRに乗り換えずに行けた。
それにしても、表参道は、全く異国の地になっていた。