小津シンポの本

今頃になって、ようやく読み終わった。

買ったのは随分前で()、その頃から少しずつ読んでいたのだが、だんだんつまらなくなって「積ん読」状態になっていた。
が、先日の溝口健二のシンポジウムを経験したことによって、同様のシンポジウムの記録であるこの本の雰囲気がつかめたので、その後は、一気に読めた。要するに、シンポジウム特有の、結論が出ないパネリストの発言について、そのまま受け入れられることができるようになったということである。
更に、蓮實先生の発言部分は、その威厳に満ちた低音の声色で音読すると、より理解しやすいのであった。(端から見ると極めて滑稽ですが。)
そういえば、この小津のシンポジウム開催時、『晩春』における笠智衆原節子が京都の宿に一緒に泊まるシーンを巡って、近親相姦的イメージを喚起させるとの議論があったことが新聞(ネットかな?)で紹介され、何を馬鹿なことを議論してるんだろうと、行けなかった僻みも混じって憤慨していたのだったが、実際活字で読んでみると、そんなに馬鹿げた議論にはなっていなかった。しかし、名のある外国人を交えたシンポジウムの性格上、どこか遠慮がちに(良く言えば紳士的に)発言が収斂してしまうのは、実は溝口シンポも同様であった。
香川京子は、小津のシンポにも出席されていた。写真で見ると洋服姿で、多分、和服姿の溝口シンポの時の方が、華やかさでは勝っていたはず。(これも小津シンポに参加できなかった僻み。)
さて、溝口健二のシンポジウムの方も、いずれ記録本として出版されるのだろうが、小津の二日間に対してたった一日開催であり、また内容も、今振り返ると、ビクトル・エリセの話以外、面白味がなかったようにも思えてきており、果たしてどのような本になるのか、期待と不安が入り交じっている。(出たら買うけどね。)
小津シンポのサイト()。まだ残っているけど、こういうのは、ずっと消さないでおいてほしい。(溝口のもね。)