漫才新人大賞@国立演芸場

本当は、国立劇場小劇場で今日と明日行われる『ロック曽根崎心中』を観ようと思って、会社を逃げるように退社し、三宅坂に赴いたのだった。
しかし、当日券は満席のため販売されておらず、雨も激しく降り始め(今日はさすがに傘を用意していたが)、このまま帰るのも癪なので、裏の演芸場で何かやっていないかと寄ってみることにした。
演芸場の前には若者が数人集まっており、人気芸人でも出演するのかなと思って入ってみると、
『第4回 漫才協団 漫才新人大賞
という催し。
主催の漫才協団とは、東京の漫才師の団体だそうだが、あまりよく知らない。会長が内海桂子で、本日の審査委員も勤めていた。
7組の若手漫才師によるお笑いコンテストだが、特にテレビカメラが入っているわけでもなく、この賞がどれだけ有名なのかは甚だ心もとない。まあ、M-1グランプリなどよりは間違いなくマイナーな賞であろう。
入場すると紙を渡され、どうやら客も審査する仕組みらしい。が、客の入りは七割程度で、オープニングで舞台に出演者が出ると、一斉に手を振り合ったりして、友人・知人がほとんどのようにも見えた。すぐ裏の小劇場に集まっていた『ロック曽根崎心中』の客層とは全く違って、どこか浅草の匂いがするなと思ったら、果たして、主催の漫才協団は浅草の東洋館に定席を持っているとのことだった。しかし、このアットホームな雰囲気はとても居心地が良く、通路を挟んで隣りに座っていたおじさんは、自分が審査の紙をうっかり足下に落すとすぐに、「落したよ」と大きな声で指摘してくれた。歌舞伎や文楽も、昔はこの大衆演芸の会場の雰囲気があったと思うのだが、今は望むべきもない。特に文楽なんかは、こんな暖かい雰囲気の中で是非聴きたいものだ。(大阪の国立文楽劇場は少し今日の雰囲気に近い。自分もそうだが、東京では「鑑賞」という意識が強すぎるから、どこか窮屈な感じである。)
出演した若手漫才師は以下の通り。

・・・もちろん、自分は誰も知らない。
どの漫才コンビもまだ完成されたものではなく、とても爆笑という感じではなかったが(それでも後の審査員寸評によると、昨年よりもレベルが高くなっていたとのことだ)、一番面白かったのは、宮田陽・昇の「U.S.A」というネタ。アメリカの州の名前を言っていくという話だが、ボケの宮田陽が、一見優等生風の格好とは正反対の動きと喋りで印象に残った。審査結果でも大賞をとったので、衆目の一致する期待株ということだろう。(しかし、ブレークするには、このコンビ名はいかにも地味だ)
次点の優秀賞はファイヤーダンスだったが、自分としてはWコロンの方が面白かった。(ねづっちというボケ役が良かった)
コンテストが終わり、休憩を挟んで、ゲストの漫才や漫談。

ロケット団は、この新人賞の第1回で大賞をとったコンビ。時事ネタを絡めてテンポ良く、なかなか面白かった。
青空一歩三歩も自分は知らなかったが、ベテランの味わいがあって、何となく良い。
内海桂子師匠は、もちろん知っているが、83歳とは思えないほど声に張りがあり、元気。漫談の他三味線で都々逸、さらには踊りも披露、客を適度にくすぐる様子にも愛嬌があり、チャーミングな古老の歌舞伎役者といった風情があった。
あした順子ひろしもテレビでお馴染みとなっているが、マツケンサンバの音楽で登場する最初から、客席を一番盛り上げていた。すごい。
 
当日券で2300円。6時30分に始まって2時間半、特に後半の内海師匠、あした順子ひろしによって、江戸の芸能の面白さの一端も感じることができ、満足してまだ雨の残る中帰路についた。これを機に、たまに演芸場にも寄ろうかな。(もう「ロック曽根崎心中」には興味がなくなっている・・・。)
(新聞記事)