3月国立劇場「加賀見山」

国立劇場『加賀見山旧錦絵』。上方の演出を面白く観た。演出というより、翫雀扇雀亀治郎の三人のバランスを楽しめた。亀治郎のお初は、義太夫を大いに意識した語りで、好感が持てたが、今はまだ、浄瑠璃のものまねの範疇、自分の言葉にはなっていない。顔の作りが柔らかくなっており、二階から見ると随分と可愛らしかった。翫雀の岩藤が意外の出来。口調が父親に似てきた。鴈治郎監修ということらしいが、相当教えてもらったのではないか。扇雀の尾上は、東京風というか歌右衛門系のあの悲壮感がないのが、観ている方も楽で良い。こういう尾上があってもいいが、これでは尾上ではないただの中老でしかない、という意見もあるかもしれない。いずれにせよ、良い舞台であった。