歌舞伎

四月歌舞伎座杮葺落し公演・初日

長かったのか、短かったのか、とにもかくにも初日を迎えた。あいにくの雨、地下鉄直結のエスカレーターは大混雑。祝祭空間に入る儀式として必ず正面玄関から入場させるというコンセプトは、その動線の悪さも加わり、初日からケチがついた感じであった。 第一…

三月国立劇場 福助の『女清玄』

南北の『隅田川花御所染』。通称『女清玄』は、昔から観たいと思っていたのだが機会に巡り会えず、今日が初見。実際、二十五年振りとのこと。南北が清玄ものを書いたのは、実は『桜姫東文章』よりもこの『女清玄』の方が先だったというのも、興味を増す。 筋…

3月ルテ 海老蔵の『夏祭』

3月のルテアトルは、当初團十郎・海老蔵親子共演の『オセロ』の予定であったが、團十郎が風邪で入院、休演となり、海老蔵座頭の歌舞伎『夏祭浪花鑑』に急遽差し替えとなった。その後、2月に團十郎が急死。海老蔵にとっては、父親の死後最初の舞台、しかも…

三月新橋演舞場・昼夜

歌舞伎座控櫓(?)としての新橋演舞場公演も今月が最後。今日は、地下鉄とつながったばかりの新歌舞伎座の地下ロビー(木挽町広場というらしい)で幕の内弁当を買ってから来場。 今月の演舞場は、菊五郎劇団若手中心+αの座組。最近の菊五郎劇団の充実ぶり…

日生劇場 二月大歌舞伎

今月の東京での歌舞伎は、日生劇場の幸四郎一座のみ。 『口上』幸四郎。怪我で休演していた染五郎が復帰することを報告。「染五郎の新しい門出」とも言っていた。息子のことしか話さず、従兄弟である團十郎急逝の件は一言も触れなかった。 『吉野山』染五郎…

国立劇場 正月歌舞伎

雪の国立劇場。 正月恒例の菊五郎劇団の新作。『夢市男伊達競』。 黙阿弥の作品をネタにしたもの。最近ではさすがに国立劇場も、この一連の菊五郎の企画を「復活狂言」とは言わなくなったが、プログラムだけはまだお役所仕事らしく、しっかり黙阿弥関連の解…

正月新橋演舞場 昼・夜

昼の部 『寿式三番叟』梅玉の三番叟、魁春の千歳、我當の翁に進之助の附千歳。 梅玉・魁春兄弟中心の、いつもの朝一番の舞踊、といった程度で観ていたのだが、我當の翁を観ているうちに、何だかじーんとなってしまった。既に足腰の弱っている我當が、必死に…

正月浅草歌舞伎・第一部

冒頭のお年玉挨拶は亀鶴。 『対面』海老蔵の工藤、松也の五郎、壱太郎の十郎、米吉の大磯の虎、新吾の舞鶴、種之助の近江、隼人の八幡、梅丸の化粧坂、亀鶴の鬼王。 いくら浅草歌舞伎が若手の修行の場とはいえ、これで木戸銭を払うには、客の方にも相当の鷹…

初芝居・浅草公会堂第二部

平成25年の歌舞伎は浅草公会堂から。第二部を観る。 正月二日の浅草を訪れるのは初めて。浅草寺への参詣客で、地下鉄の駅構内からごった返し。上がってみると、雷門の手前から二重になった長蛇の列、警官が人の交通整理をしていた。公会堂前も含めて車は入れ…

12月国立劇場 吉右衛門の鬼一・大蔵卿

12月の国立は『鬼一法眼三略巻』の通し。吉右衛門が鬼一と大蔵卿の二役を演じる、魅力ある企画。 鬼一の方は初役。初代の台本の通りにやると筋書きにあったが、なるほど、登場がいつもの花道ではなく、上手から出てきて、新鮮。 圧倒的な存在感で、これまで…

12月新橋演舞場 昼・夜

昼の部 『御摂勧進帳』 通し狂言だが、以前の国立劇場での上演と同様、それぞれ独立した幕。 「暫」 弁慶は松緑。声量あるが、イントネーション相変わらず。語尾が沈むので、爽快感がない。隈取りは映え、さながら五月人形。子供っぽいということでもあるが…

11月新橋演舞場 昼・夜

仁左衛門がずっと病気休演していて心配だったが、無事復帰。千秋楽のチケットにしておいて良かった。(たまたまだけど) 昼の部 『引窓』 「井筒屋」と「難波裏」が前につくが、以前松竹座で観た時(ただし今回「米屋」はない。)と比べると、それほどではな…

11月明治座 昼夜

明治座は、新猿之助と澤瀉屋一門による花形歌舞伎。いかにも明治座らしい。 昼の部 『吃又』 いつもの「土佐将監閑居の場」の前に、「近江国高嶋館の場」と「同 館外竹藪の場」がつく。お家騒動の中で、虎の絵が抜け出す件が描かれ、「土佐将監閑居」に繋げ…

11月国立劇場『浮世柄比翼稲妻』

国立劇場の初日に赴く。先月に引き続き通し狂言で、『浮世柄比翼稲妻』。幸四郎一座。 『鈴ヶ森』→『浪宅』→『鞘当』という構成の他、序幕に『初瀬寺』など三場がつく。 この序幕が思いの外面白かった。敵味方の構図をはっきりさせ、手際よくまとめている。…

10月国立劇場『塩原多助』

今月の国立劇場は、通し狂言『塩原多助一代記』。三津五郎の塩原多助。 無人の芝居で客の入りも良くないとのことだったが、千秋楽の今日は、多少盛り上がっていた。 塩原多助の話は、実はきちんと知っているわけではないが、馬とのやりとりがある場面は、映…

10月新橋・夜の部 幸四郎の弁慶

夜の部。4時に開演。7時30分で終了。幕間40分。観劇時間は正味3時間を切る。 『御所五郎蔵』 松緑の五郎蔵、梅玉の土右衛門。珍しい組み合わせ。 松緑は、最初の出の時、誰なのかわからない程、吊り上げた眉ときつめの目元。そのせいか童顔が大人びて見え…

10月新橋・昼の部 團十郎の弁慶

10月の新橋演舞場は、七代目幸四郎「追遠」興行として、團十郎と幸四郎が昼夜でそれぞれ弁慶・富樫を演じるという、風変わりな企画。七代目幸四郎ネタ(?)は、一昨年の日生劇場でも行われ、ここでも『勧進帳』が出ていたので、二番煎じの印象が強い。また…

新橋・九月秀山祭 昼夜

染五郎が国立劇場の奈落に落ちて怪我をし、しばらく休演。結果、吉右衛門の奮闘公演のような形になった。ファンとしては、吉右衛門三昧の一日。 昼の部 『寺子屋』染五郎が勤めるはずだった松王丸に吉右衛門。吉右衛門が演じるはずだった源蔵に梅玉。 吉右衛…

8月新橋・昼の部 福助・海老蔵・愛之助『桜姫』

昼の部は『桜姫東文章』。福助の桜姫、海老蔵の権助、愛之助の清玄。 発端の「江の島稚児ヶ淵」、福助の白菊丸は前髪だが老けが目立った。いつものように福助はいちいち顔の表情を動かすので、なおさら皺が浮き立って見映えが悪かった。続く「新清水」は、桜…

八月新橋夜の部 海老蔵の『伊達の十役』

前回観てからそんなに経っていないような気もする、海老蔵の『伊達の十役』。再演するのはそれだけ客の入りが見込めるからなのだろうが、何度も観るような芝居でもなく、海老蔵にはもっと他の演目に挑戦してほしかった。 早替わりは上達。そのスピードに磨き…

七月新橋演舞場夜の部 猿之助襲名2ヶ月目

猿之助、中車襲名の二ヶ月目。さすがに『ヤマトタケル』をまた観る気にはなれず、今月は夜の部だけ。 『将軍江戸を去る』中車が披露襲名狂言として、山岡鉄太郎を演じる。先月同様、台詞に力みがあるのは、まだ歌舞伎の舞台の台詞術や呼吸を身につけていない…

コクーン歌舞伎『天日坊』

今年のコクーン歌舞伎は、『天日坊』。黙阿弥の原作を元に宮藤官九郎が脚本、演出は串田和美。 勘三郎、福助、橋之助は参加せず、勘九郎、七之助、獅童ら若手花形中心。前進座風に言えば、コクーン第一世代から第二世代へ。コクーン歌舞伎も歴史化しつつある…

六月新橋・猿之助襲名 昼の部

澤瀉屋の団体襲名昼の部。興行タイトルとしては、初代猿翁、三代目段四郎の五十回忌追善がメインのようだが。 『小栗栖の長兵衛』香川照之改め(?)九代目中車の初披露演目。岡本綺堂の新歌舞伎で猿翁初演の澤瀉屋ゆかりの演目、中車の最初の芝居としては適…

六月新橋演舞場夜の部 猿之助襲名『ヤマトタケル』

亀治郎改め、四代目市川猿之助襲名興行。他に香川照之が市川中車、その息子が市川團子、そして猿之助が猿翁に襲名する。猿翁曰く「団体襲名」。先に夜の部を観劇。 夜の部の襲名演目は、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』。猿之助を継ぐ者としては、当然の選択…

六月博多座 夜の部

久しぶりに博多へ行く。博多座の夜の部だけを観る。又五郎襲名興行で、吉右衛門、仁左衛門、三津五郎と現代歌舞伎の三大実力者が揃っているのに、客の入りは芳しくない。先月の空しき平成中村座より、よっぽど充実しているのに。 『馬盥』仁左衛門の光秀、梅…

平成中村座五月 昼夜

平成中村座のロングラン公演もようやく最終月。しかも今日が千秋楽。といっても、明日急遽昼だけ追加されたが。 昼の部 『十種香』七之助の八重垣姫、勘九郎の濡衣、扇雀の勝頼、みな初役らしい。 七之助の八重垣姫は、登場時の背中の見せ方があっさり。綺麗…

前進座 五月国立劇場公演

前進座恒例の国立劇場公演。今回は「国立劇場大劇場出演三十回記念」と銘打っている。色々考えるものだ。 しかし、開幕の「口上」は、この場だけ出場予定の梅之助が体調不良で休演。矢之輔が代わりに口上。圭史が次の幕の準備があって出られないとはいえ、や…

五月新橋演舞場 昼夜

昼の部 『西郷と豚姫』翫雀のお玉、獅童の西郷。ともに初役。翫雀の豚姫は、過去の『お江戸みやげ』の成功から結構期待していたのだが、不発。お玉の心理描写がまるでできていない。周囲の仲居や芸妓との何気ない会話の中で、自分の絶望感を観客に自然と伝え…

四月新橋演舞場 若手花形による『忠臣蔵』

若手花形による『忠臣蔵』は、後に歌舞伎の世代交代やターニングポイントの象徴として語り継がれる場合もあるが、今月の一座は、おそらくそうした伝説とは無関係の、単なる一興行として記録されるに過ぎないであろう。もっともそれは役者に責があるというよ…

4月国立劇場 『絵本合法衝』再演

昨年3月、震災の後の自粛モードで途中公演中止となった仁左衛門の『絵本合法衝』の再演。自分は震災二日後、国立劇場がまだ中止を決めきれないでいた時点に観ることができたので、今回2回目。前回との比較も含めて、改めて面白く観れた。 もっとも、序幕は…